開催まであと1週間! 「FUJI ROCK FESTIVAL '19」必見アーティストを一気にチェック!

7月26日(金)・27日(土)・28日(日)の3日間、新潟県 湯沢町 苗場スキー場にて開催される「FUJI ROCK FESTIVAL '19」。
いよいよ開催を目前に控えるフジには、ケミカル・ブラザーズ、そしてザ・キュアーと、フジ王道のヘッドライナー2組に加え、シーアが満を持して登場。さらに、現在発売中の『ロッキング・オン』8月号の表紙を飾っているトム・ヨークの、ソロ新作リリース直後という、抜群のタイミングでのライブも絶対に見逃せない。苗場で彼らがどんなマジックを生み出してくれるのか、今から期待が止まらない3日間、必見のアーティストをピックアップしてお届けする。


FUJI ROCK FESTIVAL 7.26

THE CHEMICAL BROTHERS


実に8年ぶりのフジロック再出演となるケミカル・ブラザーズ。もちろん、グリーン・ステージへの登場で、ようやく彼らをあのメイン・ステージでまた堪能できることになるのだ。今回が7回目のフジ出演となる彼らだが、この8年の間に、15年の『ボーン・イン・ザ・エコーズ』リリース後タイミングでのフェス出演や、翌年の単独来日など、しっかり来日を果たしてきている。では、今回の久しぶりのグリーン・ステージへの帰還がなぜ大きな盛り上がりを見せているのかというと、ひとえにここにきての彼らの活動、特に最新作『ノー・ジオグラフィー』での弾けっぷりが大きな期待感をもたらすからだ。

たとえば、10年の『時空の彼方へ』の前後を振り返ると、ケミカル・ブラザーズの活動は映画や映像絡みのものが多くなっていたし、それまでのアルバム制作の流れもグルーヴと音像を追い求めるもので、強烈なビートを引き出すものにはならなくなっていたため、どことなくこのまま穏やかな活動を続けていくのかなという“上がり感”が否めないところもあった。しかし、その様相が変わったのは、15年リリースの『ボーン・イン・ザ・エコーズ』に収録され、Qティップが客演した“ゴー”が大好評だったことだ。冒頭の“アパッチ”を思わせるようなパーカッションとそれに続く強烈なベース・リフ、そしてQティップのアタックの効いたラップのコラージュ感が往年のブレイク・ビーツを堪能させ、限りなく今後の活動に期待を持たせるものになっていたのだ。

そして、それが見事に形になったのが今回の新作『ノー・ジオグラフィー』だ。全編、ヒップホップ的なエッジとハウス的なグルーヴとロック的な感性を融合させた、ケミカル・ブラザーズとしてのブレイク・ビーツが全開となった内容で、この期に及んでこんなアルバムを聴けるとは思わなかったと嬉しくなってしまうアルバムなのだ。最近のライブについていえば、ここのところのセットリストを確認してみると、取り上げる楽曲については16年の来日時とそれほど変わるものではない。しかし、新曲群と“ゴー”を前半にちりばめつつ“ケミカル・ビーツ”でぶっ放す流れなどは、明らかに新しいダイナミズムを生んでいるはずで、これが盛り上がらないわけがないのだ。待ち遠しい。 (高見展)


ELLEGARDEN


約10年間の活動休止を経て、昨夏ツアーを再開したELLEGARDEN。今年も、春にフジロックを含む4本のフェスやライブに出演することを発表し、真の復活を実感させた。フジロックは、活動休止の発表をした後の貴重なフェス出演となった2008年以来。雨の中、緊張感が漂うパフォーマンスだったことを覚えているが、今年の雰囲気は恐らく全く違うはずだ。「フジロックのELLEGARDEN」が更新される伝説的な瞬間を、見逃すわけにはいかない。 (高橋美穂)


THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES


ナイジェル・ゴドリッチと、ビジュアル・アーティストのタリク・バリを従えてのライブ。直前にソロ新作『アニマ』もリリースされるという絶好のタイミングだ。

前回のサマソニは伝統的なポップ・ソングの形式も制度的なダンス・ミュージックの形式も徹底的に回避した、非常に実験的で挑戦的なパフォーマンスだった。今回のライブは前回よりもさらに研ぎ澄まされた、現代ポップ・ミュージックの最突端が体験できるはずである。 (小野島大)



FUJI ROCK FESTIVAL 7.27

SIA


なんとシーアの初来日がフジロックで実現するとは! ご存知のように、リアーナの大ヒット曲“ダイヤモンズ”から、ビヨンセ、ケイティ・ペリーに曲を提供し、自らの曲“シャンデリア”のYouTube再生回数は20億回! “ザ・グレイテスト”ではケンドリック・ラマーと共演しているし、ポップ・スターのために書いて採用されなかった曲を集めて自らが歌った『ディス・イズ・アクティング』も大ヒット! つまり彼女は世界のポップ・シーンを形成する最重要アーティストだ。興味深いのは、この来日のタイミング。というのも、彼女のスケジュールを見ると現時点ではこのフジ出演のみ。しかし、ラビリンス、ディプロとのスーパーグループ、LSDのアルバムが発売されたばかりで、初監督作ミュージカル映画『Music』が今秋公開予定。さらに今年は3年ぶりの新作が期待されているし、絶好のタイミングでの来日となったから。

彼女のライブ・パフォーマンスを2016年にNYのフェスで観たことがあるが、まさかこんなライブだと思わなくて驚愕。正にフェスの醍醐味を味わった。セットリストは、“ダイヤモンズ”から、“シャンデリア”など、知らない人はいない大ヒット曲が披露されながらも、ステージで繰り広げられているパフォーマンスは、アーティスティックでエッジがある。ご存知のように彼女自身は大きなカツラを被り、顔を隠して黒子のようにステージ脇でほとんど身動きせず歌い続ける。センターでは、彼女のMVにも登場するマディー・ジーグラーがシーアの分身となりアート・シアターで観るようなダンス・パフォーマンスを繰り広げている。スクリーン上にはそれが映し出されていると思いきや途中で実はそうじゃないかも?と気付く瞬間がある。ファンはシーアのようなカツラを被り、楽しそうに踊りまくっていて、全体としてはある意味、「自分の声とは?」、「ポップ・ソングの意味とは?」、そして「曲に共感して出来るコミュニティとは?」など、ポップ・ソングの本質を様々な視点から表現したパフォーマンス・アートにすら見える画期的な内容だったのだ。今回、その延長が観られるのか? または、ここから新章か? 新曲は披露されるのか?など、誰も分からないことも含め、世界的に言っても超貴重な瞬間をフジの観客は目撃することになる。 (中村明美)


MARTIN GARRIX


「ULTRA JAPAN」や「EDC JAPAN」に出演してきたダッチ・ハウスの若き王=マーティン・ギャリックスが、遂にフジロックに侵攻! なのだが、5月にラスベガスのショウで右足首の靭帯を損傷、約1カ月のスケジュールをキャンセルしたのでヒヤリとさせられた。しかし7月からはしっかりと現場復帰を果たしている。マックルモアとFOB(フォール・アウト・ボーイ) のパトリックを迎えた“サマー・デイズ”は、グリーン・ステージにも映えるはず。ぜひコーラス・パートの予習を。 (小池宏和)


DEATH CAB FOR CUTIE


デスキャブ、実に7年ぶりの来日、しかも初のフジ登板!(涙) 彼らはパブリック・イメージや盤以上にがっつりロックできる腕の確かなバンド(抒情的な美メロも同じくらい達人ですが)で、5人編成にパワーアップしてもいる。昨年発表の最新作を中心にしつつ驚異的に多い名曲の数々もたっぷり含む充実のセットになるだろうし、過去20年のUSインディ・オルタナ界ベスト・アクトのひとつの底力を堪能する絶好のチャンス。お見逃しなきよう。 (坂本麻里子)



FUJI ROCK FESTIVAL 7.28

THE CURE


ほぼ四半世紀ぶりの来日公演となった2007年、そして終演が深夜0時超え、3時間に及ぶ独擅場と化した2013年と、フジロックに出演するたびに伝説を刻んできたザ・キュアーが、ついに3度目の苗場降臨を果たす。しかも今年は彼らにとって重要な意味を持つ年だ。デビュー・アルバム『スリー・イマジナリー・ボーイズ』から40年、歴史的名盤『ディスインテグレーション』から30年の節目となるアニバーサリー・イヤーであり、「ロックの殿堂」入りを筆頭にメモリアルなイベントが目白押しなのはもちろん、この2019年は単に彼らのレガシーを讃えて終わる年ではない。何よりも実に11年ぶりのニュー・アルバムの発表が予定されている年なのだ。

米『ローリング・ストーン』にロバート・スミスが語ったところによると、彼らのニュー・アルバムはクイーンの“ボヘミアン・ラプソディ”がレコーディングされたことで知られるロックフィールド・スタジオで制作され、今秋のリリースが予定されている。10分の大台を超えた新曲が複数あることから「3枚組か?!」なんて憶測も飛んでいたけれど、最終的には1枚にまとめる予定とのこと。ちなみにその内容はダークかつアグレッシブで、「フェスには向いていない」と彼らは言っているが、そもそも「フェス向きのキュアー」という概念自体に矛盾があるので無問題だ。キュアーがフェスに適応するのではなく、いつだってフェスがキュアーに染まってきたのだから。真っ赤に焼かれたナイフで氷塊を溶かし切っていくようなゴスやポスト・パンクから、涙でベトベトに溶けた綿菓子のようなギター・ポップまで、キュアーの尋常ならざる振れ幅は祝祭としてのフェスの枠組みから常に逸脱した逆さまの世界の産物であり、「僕は今なお破滅的で陰気」だと語るロバート・スミスが司る孤高の時間であり、空間であり続けてきたからだ。

目下精力的にフェス出演を続けているキュアーだが、最新セットでは平均して30曲弱がプレイされている。2013年のフジでの36曲と比較すれば、コンパクトにまとめている印象だ。ちなみにヘッドライナーとして出演したグラストンベリーの模様が伝えられているが、フジと同条件(最終日のクロージング・アクト)であるグラストが、苗場の雛形になるのは間違いだろう。 (粉川しの)


JASON MRAZ


来日公演は2014年以来の5年ぶり。昨年リリースされた『ノウ。』は、フォーキーでソウルフルなこれまでの作品の中でも最上級の心地好さ。まさに夏に聴きたい楽曲が満載。リリース前のアルバムのプロモ・イベントでの来日こそあったものの、バンド・セットでのライブを望む声は大きかった。最新曲だけでなく代表曲“アイム・ユアーズ”も演奏されるだろうし、ぜひシンガロングで応えたいところ。オーガニックでピースフルな時間が待ち遠しい。 (杉浦美恵)


JAMES BLAKE


様々な意味でファースト以来の一大転機作となった『アシューム・フォーム』を経たジェイムス・ブレイクが、自身の道のりと現在地をどのように繋いでみせるのか。最大のトピックはそこだろう。新たな音の語彙によって、より広い場所に向けて開け放った彼のエモーション。それはまだ日本のオーディエンスが体感していないものだ。2010年代における最重要音楽家のひとり、そのメロウだが優しい歌は、3日間の美しい締めくくりとなるに違いない。 (木津毅)



現在発売中の『ロッキング・オン』8月号では「FUJI ROCK FESTIVAL '19」の注目アクトをたっぷりご紹介! こちらもあわせて、夏フェスに備えてほしい。