※リリース順
怖いくらい深い愛に満ちた猟奇の名曲8
2019.10.15 13:15
愛を歌った楽曲に「怖さ」と呼ぶべき迫力がつきまとうのは取りも直さず、その愛が歌い手の全身全霊を傾けた生命の宣誓であるからに他ならない。そして、幸せな形で実った愛よりも、何かの歯車が狂ってしまったがゆえに悲劇的な結末を辿った愛の方に、我々はより強烈なドラマ性を感じ、より深く強くアイデンティファイしてしまう。ここではそんな「怖いくらいに深い愛」が焼き込まれた象徴的な楽曲について触れていきたい。「他にもこんなに怖いくらいの愛の曲が!」とみなさんそれぞれのリスナー体験を紐解きつつ読み進めていただくと、「愛を歌う」ことの業の深さをさらに怖く密に楽しんでいただけるのでは?と思う。(高橋智樹)
※リリース順
1stアルバム『無罪モラトリアム』で時代に刻んだ圧倒的な存在感をも自ら刷新してみせた、2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録曲。《云ったでしょ?「俺を殺して」》、《あたしが完全に溶けたらすぐきちんと召し上がれ》といったフレーズを通して、男と女の営みはおろか生物としての輪郭や生死の境界線すら超越するような詞世界が、4つ打ちのタイトなビート&艶かしくミステリアスな旋律と共鳴し合い、熾烈な愛の形を映し出す。
こちらは男性目線から《君の元カレ殺したいよ 君を汚したから/とても可愛い宝物 誰にも触らせない》と純情な愛情を逆噴射させた一曲。《知りたいんだけど聞きたくないんだよ》といった臆病さと《もう消えない苦味でも/君を離さない》とすべてを包み込もうとする決意が、いじらしさとシンパシーを喚起させる。が、同じシングルの収録曲“トラウマキャバ嬢”から続けて聴くことによる化学変化で、不思議と不穏な後味が残る。
タイトルにまで「ストーカー」と銘打っている通り、《職員室の連絡網、盗んで知った 番号にかけるのはこれで63回目》とあらゆる情報網を駆使して「貴方」の家を探し当て、《3丁目、3丁目》とあっけらかんとポップに歌い放ってみせる。罪の意識など欠片もなく「これこそが私の愛」とばかりに炸裂するまっすぐな情熱は、もはやつける薬のない熱病。《私の中じゃもう ふたりの家》。「怖いくらい」を通り越してはっきり怖い。
純化された「君」への想いが一転して《僕は君を許さないよ》と抑えきれない憎しみへと変貌し、それでも捨てきれない愛情とともに異形の攻撃性を伴って吹き荒れる。《君の愛する我が子が いつか物心つくとこう言って喚き出すんだ》、《「お母さんの子になんて産まれなきゃよかった」/そこへ僕が颯爽と現れて 両の腕で彼女をそっと抱きしめるんだ》――人間の愛と生命の核心を描くRADWIMPSの楽曲群の中でもひと際衝撃的な一曲。
《あなたの心臓をえぐりとって 私のネックレスにしたなら/私が眠るその時まで あなたを感じられる》と歌うインディーズデビュー曲を鬱屈した情念からではなく、至ってカジュアルな愛の宣誓として提示しているところに、あいみょんの真の「新しさ」があったのだろう。《死ね。 私を好きじゃないのならば》……劇薬的な言葉を卓越したバランスで「うた」へ昇華する奥深さは、最新シングル“空の青さを知る人よ”にも通底している。
突然(おそらく一方的に)告げられた別れを受け止めきれず、《春になったら殺っちゃうぞ!/だから顔も体も名前も全部/ずっと覚えてて忘れないでいよう》と愛憎入り乱れたままの感情を噴き上らせた、3rdアルバム『mothers』のオープニングナンバー。本気で愛した相手への想いは、最後には《仏になって許してやる/だから顔も体も名前も全部/ずっと覚えてて忘れないでいろ》と常軌を逸した愛のメッセージへと帰結していく。
※リリース順