星野源『おげんさんといっしょ』渡辺直美、松重豊、PUNPEEも新ファミリーに加入した第3弾を観た!

星野源の冠音楽番組『おげんさんといっしょ』(NHK総合)の第3弾が10月14日に生放送された。過去最長となる90分の生放送ながら、視聴者からすればあっという間に感じるほど充実し、それでいて良い意味でだらだらとしたゆるさも魅力の放送だった。

星野源扮するおげんさんと、高畑充希扮するお父さんが画面下からぬるっと登場し、番組はスタート。番組公式ツイッターなどで公開された事前の予告動画で星野も話していたが、今回第3弾、去年は『NHK紅白歌合戦』にも出演したおげんさん一家の風景に見慣れ始めていることが「当たり前」を変えてきた星野の凄さを表している。藤井隆扮する長女・隆子、宮野真守が声を当てるねずみを含め、おげんさん一家は配役ひとつとっても最初は驚くものだったし、90分の生放送特番の始まりが拍手もなく「日常」と地続きに始まるのもすべて画期的で異質だ。

一家が家に入ると、そこには宮野扮する16歳のアイドル・雅マモルが。番組1曲目は、前回も歌われた彼の持ち歌“恋はホップステップジャンプ”をバンドver.で初披露。画面内でキレキレに踊りながら2番まで歌い、『NHK紅白歌合戦』以来のおげんさんと雅マモルの共演で番組はスタートした。

「だらだらした音楽番組」というテーマだった第1弾に原点回帰し、今回は好きな音楽をみんなでゆったりしゃべる、という時間が前回よりも多くあった。藤井がデッド・オア・アライブを紹介すれば、星野とドームツアーも回ったお馴染みのメンバーによるおげんさんバンド(河村“カースケ”智康(Dr)/ハマ・オカモト(B/OKAMOTO’S)/櫻田泰啓(Key)/石橋英子(Key)/長岡亮介(G/ペトロールズ)/STUTS(MPC))によってアレンジされた“YOU SPIN ME ROUND”を隆子が髪をほどき、振り回しながら歌い上げた。ふざけるところはふざけながらも、全編英語詞を難なく歌い上げる藤井のボーカリストとしての力には改めて驚く。後半にスナックのママ・豊豊(ほうほう)として登場した松重豊はトム・ミッシュやルイス・コールらをVTRを交えながら、楽しそうに紹介。俳優としての活動では見られない音楽好きの一面を見せた。星野が「ベースがドープ」と、NHK教育テレビ『さわやか3組』のテーマを音楽的に語るなど、ラジオなどで一貫して行っているメディアを通して自身のファンに音楽の面白さを分かりやすく伝える、星野の意気込みがこれらの音楽トークにも感じられた。

音楽好きの芸能人がジャンル問わず出演するこの番組だが、今回は渡辺直美扮するビヨンセが登場。皆が知っているモノマネではあるが、実は星野のドームツアー「POP VIRUS」の幕間映像に登場したときが初めてのしゃべりだったそうで、今回も口調など探り探りの状態の中、咳をしてしまう場面では星野もひざまずいて笑うほど。その後もビヨンセ“Crazy in Love”をバンドがTake3まで演奏するが、最後まで歌わず。隆子も「歌わない、っていうだけで十何分って凄いわね」と感心するほど、存在と踊りで笑わせ続けた圧巻の渡辺直美ショーだった。

ほかにも、この番組のテーマとして「生演奏」があるが、ボーイに扮して登場したPUNPEEとともにSTUTS“夜を使いはたして feat. PUNPEE”を生演奏で披露したのには選曲も含め驚いた。ドームツアー「POP VIRUS」でも披露された、星野の楽曲をトラックに使ったバージョンで、もとの楽曲の良さもさることながら、星野とバンドメンバーの長岡亮介によるコーラスにさらに聴き込んでしまう魅力的な演奏になっていた。演奏後、星野が「世界で一番かっこいい音を今、出してる自信がある」とPUNPEEと握手を交わしていた場面が印象的だった。

「こうやってみんなと一緒に同じ時間を過ごせて、音楽の話をしたり、音楽を奏でたりするのは本当に幸せなことです。これからもおげんさんをよろしくお願いします」というメッセージとともに最後に演奏されたのは星野源“Pop Virus”。PUNPEEが星野の楽曲のフレーズなどを織り交ぜたラップで参加し、この日限りのライブ感満載なコラボとなった。ゆるく笑える場面と真面目に音楽を届ける場面が混在するのは、これまでの星野のあらゆる作品や、今回テレビ初披露された新曲“Same Thing”の歌詞にも通じるのではないだろうか。

前回に続いて今回も「#おげんさん」がツイッターの世界トレンド1位を獲得し、関連ワードも多数トレンド入りするなど大きな盛り上がりを見せた『おげんさんといっしょ』。今回は台風による豪雨被害が発生した直後の放送となったが、番組冒頭で星野は「みんなで同じ時間を共有できたら」と語り、実際にそのような視聴者と距離の近い生放送になっていたように感じた。星野が仲間とともに作り上げたゆるくて真剣なこの時間がまた近いうちに見れることを願います。(菊智太亮)