自身が開発を進めた高音質デジタル音源システム「ポノ」を立ち上げたニール・ヤングだが、かつてデジタルに移行し、後悔したことを振り返っている。
ニールはポノの事業展開に伴う資金を資金募集サイトのキックスターターで募集し、すでに目標の80万ドル(約8160万円)をゆうに超えて、現在300万ドル(3億600万円)を集めることに成功しているが、ニールはかつて完全にデジタル音源に取り組んだアルバムとして1989年の『フリーダム』と92年の『ハーヴェスト・ムーン』を挙げていて、このアルバムの時期について「デジタル・サウンドの暗い時代だった」と『スピン』誌に振り返っている。
「でも、そこから逃れることはできるわけで、実際にそうしたんだよ。俺たちはアナログに戻ってリリースする時は、そこからデジタルにしていくようにしたんだよね。それも本当は納得いかなかったけど、人が買うのはそっちだったからそうしていたわけで、俺たちもそういう形でしかレコード会社との契約を果たせなかったからね。でも、保存している音源については、リリースされているものよりいいものだと、せめてそれだけはわかっていたんだよ。ただ、その状態はメンタルな意味でかなりしんどかったよ。というのはデジタル時代の前にはそんなことは経験しなくてもよかったわけだからね。昔は作ったものをただリリースして、みんな全員同じ音を聴いてたんだよ。人が音楽を聴いていたのはそのせいだったんだから。音楽がある世代全体までを動かしたのはそのせいだったんだよ。音楽は魔法のようなものなんだ。でも、密閉して圧縮したりすると、その魔法も失われてしまうんだよ。音楽はそんなこと好きじゃないからね。音楽は他のどんなものとも同じで、空気や隙間が必要なんだよ」
また、最新のテクノロジーとの折り合いのつけ方については次のように語っている。
「俺は自分にとって最高の音だと思えるレコードを作ってるんだよ。でも、テクノロジーは1992年、あるいは91年くらいから使ってるんだ。俺は自分でできる限り最高の音の状態にしたアナログ・マスターを作ってて、それ以外にも最高の音を作るのに必要と思えるものはすべて使っている。でも、過去5年くらいはそれと同時にデジタル・マスターもずっと同時に回してるんだよ。いつかそっちの方がいい音だと思えるような日が来たら使えるようにね。それからアナログ・ヘッドを通して記録するデジタル・マスターを使うようになったから、アナログ・サウンドなのにテープには記録されずに、そのままデジタルとして記録されるようになってるんだ。そうすると音域の幅はなくても、アナログのサウンドは確保されるんだよ。だから、そうやって少しずつ前に進むことができるんだよね。で、俺はずっとアナログにこだわってきたけど、少しずついろいろ変えてはきてるんだよ。でも、いつも自分が大好きになれるレコードを作ってきたつもりなんだ。時々、俺が好きなものはみんなが好きなものではなかったりするんだけど、でも、それはそれでいいんだよ。そのおかげで俺は今もまだ活動をやらせてもらってるんだから」
その一方でジャック・ホワイトのサード・マン・レコードで制作し、今月中にもリリースを予定しているカヴァー集『A Letter Home』については次のように語っている。
「『A Letter Home』はレトロ・テックなものになってるから、きっとみんなも混乱しちゃうかもしれないな。レトロ・テックっていうのはね、1940年代のレコーディング施設で制作したということなんだ。ほとんど電話ボックスみたいなやつなんだけどね。全曲、アコースティックとハーモニカだけのもので、マイク1本でそのままアナログ音源にしたものなんだよ」
なお、これまでポノについてやめるように説得する意見を多く受けてきたともニールは語っているが、そうした意見については次のように語っている。
「そういうのはレコードの作り方の実際をよく理解していない人たちの意見なんだよ。いろいろね、実はあまり自分の言ってることの意味をわかってないっていう意見を聞かされたよ。それと、わざわざまたなにかを変える必要なんか全然ないと考えてる人たちもいるんだよ。そういう人たちには今うまくいってるものは今起きてるものでしかないんだ。それと、シリコンヴァレーのものの考え方がこれからもずっと支配的になると、連中には物事が全部わかってると、だからこのままでうまくいくんだと、そう思ってる人がたくさんいるんだよ。でも、それはもう閉じられたもので、これから二度と変わらないんだとね。そういう人たちについてはみんな全員、感性が欠落してるんだなと俺は思うよ」