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MCのないライヴだった。Vo&G菜花は曲が終わるたびに「サンキュー」しか言わなかった。デトロイト7は、ただロックだけを鳴らして去っていった。ロックを鳴らすことが、何よりもの観客とのコミュニケーションの手段だ、と言わんばかりの態度だった。それが本当にカッコよかった。
登場前のSEは、「プッシー!」をやたら連呼しまくるガレージ・バンド。これがデトロイト7なりのユーモアだろう。笑いたいやつは笑ってくれ、引くなら引いてかまわない――だろう。その通り、スタートは初手からガッキンガッキンのギター・リフをマジ容赦なく炸裂させる“Inside”。ただ、彼女らは轟音で疾走するだけじゃない。続く“Beautiful Song”は、アメリカン・ロックのスケール感がメインだ。その多様性を支えるのは、巻き舌でリスナーをやや突き放したような菜花のヴォーカル。繊細さと野性味の同居が感じられて、そこがセクシーなのだ。そして、そんな左利きの彼女が、裸足で長い髪を振り乱しながらギター・ソロを弾く姿は、ロックがその長い歴史の中で生み出してきたいくつもの伝説へと重なっていく。クールに決めているが、クライマックスでは抑えきれない激情をプレイに叩きつけていくベース、ドラム。そんな3人が放つ、グランジの冷たさとアメリカン・ロックの温かみの混合物が、会場の空気を染めあげていく。初めてデトロイト7を観た人も多かったろう。満員のお客さんに迎えられて――という状態ではなかった。しかし、そのほぼ全てのお客さんを、3人は30分間まるごと、圧倒的に釘つけにしてみせた。だからこそ、このライヴがいつか伝説になることを俺は願う。(柳憲一郎)
東京から来たデトロイト7大好きな3人組。
「菜花さん、すごいキレイだった」
腕にはこんなものまで書いていました。