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 大晦日の幕開けには、こんな男たちのファンファーレが相応しい。勝手にしやがれの登場だ! すでに熱を帯びたMOON STAGEが独特な色気で満たされていく。ライヴは“35°5”からスタート。徐々にうねりを増していくこの楽曲は、アルバムでもライヴでも来るべき爆発への導火線として機能している。そこからは管楽器がマシンガンと化すアップビートナンバーを連射。右肩上がりのライヴは、合唱が起こった“ロミオ”を挟んで、“円軌道の外”でフィニッシュ。それにしても舞台の中央で挑発的なドラムを叩きながら、叫び歌う武藤のカッコよさはちょっと尋常じゃなかった!
 続いては、新進気鋭のギターバンド、つばき。開始を待たずして、すでにフロアが埋まっている。大きな期待を受けステージに上がった3人が最初に鳴らしたのはアルバム同様“踵”。《あの日の空に 踵を鳴らして》という歌詞が、「今」を鳴らすための決意表明にも聞こえる。“雨音”、“アセロラ”、“サヨナラ”と情感豊かなナンバーが続く。一切の贅肉が削ぎ落とされたアンサンブルが描く「青さ」だからこそ、これほどまでに鋭利に響くのだろう。「フェスに出ると人気者かと勘違いする」と一色は苦笑していたが、ここにいる誰もが大声援を送る鮮やかなCDJ初登場劇だった。
 そして、Ces Chiensの2人が悠然とステージに上がった。幕開けは、なんと“ラブ・ゼネレーション”! 早川義夫のキャリアの原点ジャックスのナンバーだ。あらゆる感情を飲み込んだかのような鬼気迫る早川の声が性急なメッセージを突きつける。続くは、“サルビアの花”。30年以上前の楽曲だが、説得力を維持するどころか日々強めている気さえする。渋谷陽一も話していたが、「権力に屈することなくポリシーを常に貫いてきたアーティスト」だからこそ成せる離れ業なのだろう。若いオーディエンスが早川の声に真剣に聞き入っていた。その様子が本当に嬉しかった。
 温かい拍手に迎えられて照れくさそうに登場してきたつじあやの。「大晦日のことを歌った曲です」というMCから“明日によろしく”でスタート。ハンドクラップがどこからともなく生まれ、全体に連鎖していく。大歓声を呼んだ“パレード”、“いつまでも二人で”で完全に出来あがったフェス的な平和空間。MOON STAGEを満たしたオーディエンスに惜しまれながら彼女はステージを後にした。今が真冬であることを忘れさせるような微笑ましいステージだった。(小柳大輔)

勝手にしやがれ
つばき
1 35°5
2 ミシェル・セッド
3 オール・ザ・マッドメン・ブルーズ
4 チュニジアの夜
5 ラグタイム
6 ロミオ
7 Z28
8 円軌道の外
1 踵
2 雨音
3 アセロラ
4 サヨナラ
5 昨日の風
6 君のヒゲ
7 冬の話

Ces Chiens
(早川義夫&佐久間正英)

つじあやの
1 ラブ・ゼネレーション
2 サルビアの花
3 H
4 パパ
5 音楽
6 身体と歌だけの関係
7 父さんへの手紙
8 堕天使ロック
1 明日によろしく
2 風になる
3 ブルー
4 パレード
5 いつまでも二人で