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不穏でダーティーなアンダーグラウンド・ヒップホップのオープニングSEに乗って登場したMO'SOME TONEBENDER。「帰ってきたぜー!!」という奇声ともつかない昂ぶったシャウトに、ほとばしるような熱が込められているのが分かる。坊主頭の武井が自らのベースを手放して、ハンド・マイクで煽り立てるギャング・オブ・フォーの“To Hell With Poverty!”のカヴァーからのスタートだ。昨年からのモーサムは、「地下活動」と呼ばれる実験期間を経ていて、元々ドラマーを務めていた藤田がギターや鍵盤などを操り、サポート・ドラマーを迎えてライブを行うというフォーメーションになっている。先頃リリースされたニュー・アルバム『STRUGGLE』からのナンバーである“youth”や“Junk”なども続けて披露されてゆくが、この編成で鳴らされる音の奥行きと音圧が尋常ではない。美しく塗り重ねられたノイジーなロック・サウンドが溢れ出している。

そしてギターを掻き鳴らしながら飛び跳ね、甲高いシャウティング・ボーカルを聴かせる百々。紛れもなく絶好調、というふうに見えてしまうのだが、彼はニュー・アルバムのリリースとほぼ時を同じくして事故で腰椎を骨折。まだ完治には至らないはず、という状況を押しての登場である。むしろこの無闇にヴォルテージの高いパフォーマンスは、そんな逆境の成せる業という部分もあるのかも知れない。頭が下がる思いだ。同期シークェンスとともに繰り出される重量級ダンス・ロック・チューン“Lost In the City”では武井と藤田が色とりどりのライトセーバーを振り回しつつオーディエンスたちの壮観なスウェイを誘い、そして百々が「それじゃあ最後に、俺たちからちょっと早いお年玉やるけん、持って帰って」と告げてドロップされたのは“Hammmmer”だ! 金属的な響きを持って鳴らされるハンマー・ビートとバンドの轟音に、今にも打ちのめされてしまいそうである。飛躍的なヴァージョン・アップを果たしてシーンの最前線に帰還したモーサムからは、2011年も目が離せない。(小池宏和)