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COUNTDOWN JAPAN最終日、MOON STAGE2番手となるのは仲井戸“CHABO”麗市。生ける伝説の登場である。彼のコアなファンから、おそらくは初見であろう若いお客さんまでもが集まったフロアの期待を引き受けるように、ふらりとひとり(今日のステージは終始彼のみで行われた)で現れた彼が初っ端弾き語ったのは“よォーこそ”! RCサクセションのライヴで、忌野清志郎がメンバー紹介をする際に使ったあの曲だ。これ以上ない、最高の幕開けである。 そのまま流れ込むように始まったのは“ゆく歳 くる歳”。鳴っているのはエレキ・ギターとヴォーカルだけなのに、その両方の音がひたすらに格好良すぎて、本物すぎて、彼が放つ情報量に負けて頭の中がパンクしそうになる。そのままシームレスに演奏された“打破”が終わったあと、「はーい、こんにちは。レッド・ツェッペリンでーす!」とか「去年はバンドで来たけど、人間関係が面倒くさいんで今年はひとりで来ました。ロックしたいけど人間関係が面倒くさいってやつ! ひとりでもロックはできるぜー!」というなんとも「らしい」MCが挟まれ、フロアが笑いに包まれる。さりげないことではあるが、まるで気取らずにこういうことを言ってしまえるところからも、彼のパフォーマーとしての百戦錬磨ぶりが感じられる。ギターの腹を叩いてリズムを作りながらアカペラで歌われた“My Work Song(労働歌)”の際、何のアジテーションもなしに自然と観客から手拍子が起こったのも、彼の一挙手一投足が観客を惹きこんでいるからこそのことだろう。
ライヴを締めくくったのは“上を向いて歩こう”。日本に住んでいる者ならば必ず定期的に耳にするであろうこの超名曲が、まったく新しい(チャボがこれまでに歌ったそれとも、清志郎が歌ったそれとも違う)、まっさらなロックンロールとして鳴らされる。ロックンロールは何度でも生まれ変われるんだな、本物のロックンロールっていうのはこういうことなんだな、と感服せずにいられない。今更ここでつらつらと挙げるまでもなく、日本のロックの歴史そのもののようなキャリアを歩んできた61歳の彼だが、今日演奏したどの曲の中にも、必ず少年というか、ロックンロールの雷に初めて打たれたばかりのティーンエイジャーのように見える瞬間があった。その度に、「仲井戸麗市ってすげぇなぁ!」「ロックンロールってすげぇなぁ!」という思いが、同時に感動の大波として押し寄せてくる。胸が震える。観客ひとりひとりに語りかけて「観られて良かったねぇ!」と喜びを分かち合いたくなる、至福の30分だった。(長瀬昇)