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『JAPAN JAM 2010』と『2011』はZAZEN BOYSで登場、『2012』は向井秀徳アコースティック&エレクトリックとして星野源と一騎打ち的セッション……と初回から毎回出演を果たしている向井秀徳。今年は曽我部恵一との共演が『JAPAN JAM』で実現! ゆったりステージに歩み入って着席する向井、テレキャスターのネックにスプレーをかけ、念入りにチューニングを施し、ちびりぐびりと酒を口に運び……といった仕草のひとつひとつに至るまで、実に絵になる。「『JAPAN JAM』へようこそ! MATSURI STUDIOから、MATSURI SESSIONをひねくり上がってやってまいりました、THIS IS 向井秀徳!」というお馴染みの口上から、ZAZEN BOYSナンバー“Water Front”をテレキャス弾き語りで披露。あの鋭い刃のようなテレキャスの音色、妖気に満ちた向井の歌声が、スタジオコーストを隅々まで支配していく。


挨拶代わりの1曲を終えたところで「今日の日の素敵なお客様をお呼びしましょう。曽我部恵一!」と曽我部を呼び込む向井。「どうも。曽我部です! じゃあ、自分の曲を1曲、やりますね」とアコギを手に歌い始めたのは“満員電車は走る”。曽我部のあの伸びやかな声とメロディが、フォーク・ミュージック自然発火級の熱量に満ちたギターの響きとともに広がっていく。弦も切れよとばかりに激しくギターをかき鳴らし絶叫する曽我部に、熱い拍手喝采が巻き起こる。そんな曽我部の熱演に、今度はホスト・向井がZAZEN曲“はあとぶれいく”で応えていく……といった具合に1曲ごとに主客交代しながら曲を重ねていた2人だが、“トーキョー・ストーリー”からはいよいよ2人のセッションがスタート。


イントロの美しいアコギ・フレーズを奏でる曽我部に、「はっ!」と気合い一閃、鋭いアコギのコード・ストロークで加わる向井。曽我部とメロディのキャッチボールをしながら絶唱する向井。そんな向井のヴァイブに、さらなる熱気の彼方へと昇り詰めていく曽我部。2人のケミストリーが、至上のメロディに異次元の高揚感を吹き込んでいるのがわかる。続いて、向井がテレキャス、曽我部がストラトに持ち替えて披露したのは、ナンバーガールの“IGGY POP FAN CLUB”! 2人で熱く歌い、立ち上がってギター・バトル的に激しく6弦をかきむしり、「そう、今夜のお客様は、ギター・曽我部恵一!」という向井のコールとともに曽我部が最高のギター・ソロをキメてみせる。「曽我部恵一!」「向井秀徳!」と名前を呼び合う2人に、フロアから熱い拍手が沸き上がる。


「30年ぐらい前に、グレイトフル・デッドのメンバーにいましたよね?」という向井の無茶振りに「……いました(笑)」と応じる曽我部、「写真で見たことあります」と続ける向井。「焼酎飲んでんの?」と、今度は向井の手元の酒を見た曽我部が尋ねる。「ステージ・ドリンクどうしましょう?っていうシートがあって、『焼酎』って書いといたら、用意してくれました」と向井が答え、そのままちょっとした焼酎談義に流れ込んでいく……「音の真剣勝負」的な演奏と、至ってリラックスしたMCとのギャップ。ロックの達人同士だからこそ生み出せる濃密な磁場が、びりびりと心と身体を震わせてくる。そして、2人でアコギを手にして歌い上げたサニーデイ・サービス“サマー・ソルジャー”の、超高気圧的な開放感といったら! 最高だ。


最後は「福岡の後輩の曲なんですけど。名前変わっちゃって。明日出るらしいんですけど」という向井の言葉から、去年も向井&星野源で披露していたYUI“CHE.R.RY”を2人渾身の力で絶唱! これまでも幾度も共演している2人ではあるが、「曽我部さん、またこれやりましょう。4時間ぐらいやりたいですね」(向井)「その、4時間やった後の向井くんの感じが見たいね(笑)」(曽我部)という会話が、この日のステージの充実感をリアルに物語っていた。(高橋智樹)



◆向井秀徳アコースティック&エレクトリック
ゲスト・アーティスト:曽我部恵一

1.Water Front
2.満員電車は走る(曽我部恵一)
3.はあとぶれいく

with 曽我部恵一
4.トーキョー・ストーリー
5.IGGY POP FAN CLUB
6.サマー・ソルジャー
7.CHE.R.RY

all pics by TEPPEI