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18:35 レイク・ステージのまさに有終の美、曽我部恵一。
そして観客のみんな、ありがとう!

8/3 21:20 UP
どちらのステージにしても最終日のトリというのは、特別なものだし、大変なものである。なぜなら、もうフェスが終わってしまうという切なさを背負わなければならないからだ。様々なアーティストが登場した楽しい時間、その最後というのは、楽しければ楽しかったほど、大きなものを背負わされる。逆に言えば、その切なさを背負って余りある力量を持つアーティストがステージを行なうということだ。曽我部恵一、今年のレイク・ステージの大トリを務めてもらったこの人ほど適任の人もいないだろうと思っていたが、クロージング・アーティストとして想像以上にとても素晴らしいライヴを披露してくれた。
日没どき、まるで会場の雰囲気にチューニングしていくかのように静かなイントロが聞こえ出す。“道”。歌のほうも黄昏のこの空気を愛撫するかのように一つ一つ大事に歌われていく。そしてサビで歌われるのは、こんな言葉。「黄昏に続く道、太陽が沈む道」。日没のこの瞬間にピッタリの、この曲でしかあり得ない親和性が場内を包む。2曲目は“She’s a Rider”。優しい疾走感を持つこの曲で、だんだんと先程よりもバンドとしてのヴォリュームを上げていく。そして、3曲目は“White Tipi”。ここでフルスケールとしてのバンドが初めて見えてくる。それが、すごく心地いい熱量なのだ。楽しいんだけど、切なさも匂わせていて、パンクやロックンロールにはない絶妙のラウドさ。本当にこの3曲は、フェスの最後のこの空気に歩み寄っていきながら、自分のほうに空気をたぐりよせていく理想的な流れ。しかも、バックバンドをつとめたダブル・オー・テレサの繊細なタッチの演奏も素晴らしく、“White Tipi”が終わって完全に夜がレイク・ステージを包んだ頃には、完全に曽我部のペースの空気が出来あがっている。
「今日、海行ってきたんだ……帰りたくないね」。そんなMCの次に始まったのは“瞬間と永遠”。どこまで計算してるのか分からないが、ハマリ過ぎってくらいハマっている。そして、今この場所にいると、どうしても言葉にグッときてしまう曲をこの後も彼は連発していく。“夏”“浜辺”。特に“浜辺”の《夜を越えて》というリフレインには泣いた。フェスの最後にそんなこと言われたら、泣いちゃうに決まってるじゃんかよ。そして、少し雰囲気を変えてソロ1発目のシングルだった“ギター”。ご存知の通り、この曲はシビアな現実と向き合った歌詞なのだが、実は曲調は意外と軽やかでノリがいい。まさに今レイク・ステージを包んでいるのは、そんな空気だ。フェスは終わるけれど、そこと向き合って穏やかに楽しんでいく。そして、白眉は、珠玉のバラード“愛のかけら”、ソロ・ファーストから“おとなになんかならないで”の後に披露された曲“STARS”。「帰りたくないけど、最後の曲です。みんな一緒に歌って帰ってください」と言われて始まったこの曲が良かった。切ないけど最終的にはキラキラしたものを与えてくれるような曲なのだ。《見てよ 夜が明けるこの瞬間 なんて気持ちいいんだろう》。今この場では、この曲によってフェスが終わるこの空気に希望を与えられたような気がする。そして、アンコール。これもニュー・アルバムからの曲“FIRE ENGINE”で歌ったのは《あんな家には帰らない どこかへ行こうか/でも、この家にすべりこむ》。濃厚なブルースでささやかに現実へと戻す。最初から最後まで徹頭徹尾、このフェスの大トリというポジションに選曲も演奏もジャストにマッチさせたフェスの最後にふさわしいライヴだった。(古川琢也)
そして、ロック・イン・ジャパン2003の、レイク・ステージのすべてのアクトが終了しました。会場に来てくださった皆さんは、本当に、最後まで体調管理には注意してくださいね。
――みなさんは、これだけの暑さの中、長時間野外で過ごしたわけですから、疲れていないはずはありませんよね? でも、その疲れのすべてを、まるで魔法のように心地よいものに変えてしまう、それがフェスティバルというものだと我々は思います。そんな風に、みなさんがこのロック・イン・ジャパンで心地よい疲れを感じていてくれたら。そして、また、この冬にこんな心地よい疲れをみんなと共有したいと思ってくれたとしたら、これほど嬉しいことはありません。みなさん、本当にありがとうございました! また、今年の冬、幕張で会いましょう!!(クイックレポート班、レイク・ステージ担当一同)