13:10、巨大化した会場の期待を一身に受けて、銀杏BOYZの4人がついにステージに上った。峯田は上半身裸だ。「何万人だか知らねぇけどよ、夏だか冬だか知らねぇけどよ、せいぜい踊り狂って帰れよな!」という峯田流の前のめりな開会宣言の後、腹にズンズンくる重いビートを持った“あの娘は綾波レイが好き”で熱気と狂気のライヴがスタートした。ベースの安孫子に飛びかかる峯田。その峯田を全身で受け止めて共に崩れる安孫子。アフロヘアを前後に揺らしギターを掻き鳴らすチン中村。ドラムの村井はすでに汗でぐっしょりだ。ペース配分一切なし、テンションの上限をどこまでも更新し続けるこのライヴを観て、心のひだが波立たない人がいるだろうか。どうしようもない衝動に突き動かされながら、まだ見えないどこかに向かって全力疾走を続ける4人の姿を見ると、僕は鼓舞され、励まされ、力強く背中を押されているような気がするのだ。 ステージはオーディエンスのあらゆる感情を刺激しながら進んでいく。「君がそばにいてくれたら僕はもう平和なのさ」というセリフから“SKOOL KILL”を演奏し始める4人。「君のことが大好きだから僕は歌うよ」というようなリフレインが胸に突き刺さる。そして、峯田はおもむろにアコースティック・ギターを持ち、“人間”を歌い始めた。「戦争反対、戦争反対、とりあえず戦争反対って言っておけばいいんだろ!」というシリアスなメッセージを(これまた峯田らしく)叫ぶ。ここからライブは信じられない展開を見せ始める。曲の中盤、バンドが音を重ね始めたのをきっかけに、峯田は拡声器を持って満員の観客席へ飛び込んだ。筆者の位置からはメッセージの内容までは確認できなかったが、峯田は拡声器片手に顔を歪めて叫び続けている。ステージ上ではチンがアフロを刈っている。そして、峯田は観客席を飛び出し、レイク・ステージ外周を多くのファンに囲まれながら歩き始めた。ステージ横のモニターに映し出される峯田と峯田に触れようとするオーディエンスの姿は、完全に事件性を帯びていた。結局、峯田はレイク・ステージの外周をヨレヨレになりながらぐるりと回ってしまった。傷だらけになりながらステージに戻ってきた峯田が欲しかったのは、肌と肌を触れ合わせる直接のコミュニケーションだったのだろうか。そして、会場が割れんばかりの大歓声に迎えられて始まった“青春時代”。合唱に次ぐ合唱。拭おうともせずに涙を流しているお客さんもいる。ライヴは一度も弛緩することなく終了、無数の拳と鳴り止まない拍手に見送られてバンドは去っていった。 これを最高のライヴと言ってしまっていいのだろうか。無邪気に「最高」とは言えないライブだった。ただ、ここにいた全員が峯田和伸という人間の生き様を見た。それだけは確実に言える。(小柳大輔) 1. あの娘は綾波レイが好き |
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銀杏BOYZ のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ