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さぁ、2日目のWING TENTも残すところあと一組。そう、全員ブラックの装いでシックにきめたTHE NOVEMBERSにすべては託されたのだ。「こんばんは、THE NOVEMBERSです。楽しい夜をーー」と開口一番に小林祐介(Vo&G)が告げて、4人で波長をあわせるようにひとしきり轟音を掻きむしり、オープニングの"pilica"へ。ケンゴマツモト(G)のギター・フレーズがきらびやかに空間を彩り、深い残響音をたたえたバンド・アンサンブルがWINGを瞬く間にTHE NOVEMBERSという名の異境へと誘ってゆく。意識を漂白するような、美しくもドラッギィな音像だ。一転、続く"dysphoria"では小林、真紅のライトを浴びてカート・コバーンのごとく半狂乱にシャウト! さらに"こわれる"→"dnim"と間断なく畳み掛け、フロアにいくつもの腕を突き上げてみせる。神経中枢に訴えかけるようなサウンドに、誰もがじっとしてはいられないのだ。MCでは、「暗くなってきましたね。僕ら、三度の飯より日陰が好きなので……ムリして笑わなくていいよ!」と客席をなごませる小林。緊迫した演奏とは対照的に、温かなムードが場内に広がる。「今のこの瞬間と、目の前にある事実に感謝します。ありがとう、NOVEMBERSでした」と穏やかに語りかけ、本編ラストは"バースデイ"、"Misstopia"を披露。強烈なバック・ライトを浴びて鳴らされた後者は、NOVEMBERSの真骨頂と言うべき哀しくも崇高なサウンド・スケープをWINGに広げた。

熱烈な手拍子に応えて、再びオン・ステージした4人。「アンコールまで残ってるってことは、みんな物好きですな(笑)。次会うときまで、みんな、元気で。バイバイ!」と別れの言葉を告げて"白痴"をプレイ。小林は声を限りにシャウトし、ドラムス・吉木はドシャメシャにスティックを打ち付け、ケンゴはステージに倒れこんでノイズを量産――文字どおり死力を尽くしたパフォーマンスに、フロアからは万雷のアプラウズが送られたのだった。(奥村明裕)