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「黒猫チェルシーのリハーサルですよ!」「この曲本番ではやらへんから盛り上がっていいですよ!」(渡辺・Vo)とリハ段階からエネルギー全開の黒猫チェルシー。本番では澤(G)、宮田(B)、岡本(Dr)に続いて早くも白シャツをはだけた渡辺が登場し、まずは“ベリーゲリーギャング”をお見舞い! タイトなビートの上でざらついたギターが唸りを上げ、渡辺はスタンドマイクをブン回す! “ショートパンツ”では「狂気」をそのまま音にしたようなドス黒いグルーヴがトグロを巻いて、夕方で涼しくなった場内の空気をじわじわと温めていく。さらに「新曲をやらしてくれ!」と“泥カーニバル”が投下されると、WING TENTは背徳的な快楽がうごめく未曾有の熱狂空間へと導かれていった。
今年5月に初のフル・アルバム『NUDE +』をリリースした黒猫チェルシー。中盤では、その中でも飛びきり蒼くストレートなロックンロールが疾走する“YOUNG BLUE”を披露。それまでとは一転して、焦燥的なムードが場内を包み込む。こういう曲を聴くと、彼らがまだ20歳になりたての新鋭バンドなんだということを改めて思い知らされる。目の前のモノを蹴散らすどころか目にも入っていないかのように爆走するロック・サウンド、個々のカラーが際立ったプレイヤー3人の佇まい、そしてフロントマン・渡辺の飛び抜けたカリスマ性。そのどれもが堂に入っていて、もう何年もシーンを引っ張っているような貫禄に溢れているのだ。「まだまだ行けるよな!?」(渡辺)というアジテートから放たれた、後半の必殺ナンバー“廃人のロックンロール”。《さらに窮屈なロックンロール!》の大シンガロングをWING TENT中に巻き起こし、オーディエンスを一人残らず狂乱の渦中へと引きずりこんでいったさまは、たまらなく痛快だった。“Hey ライダー”ではハイウェイを突っ走るような野太いビートに乗って渡辺が踊り狂い、ラスト“嘘とドイツ兵”では燃えたぎる爆音でWING TENTを燃やし尽くした黒猫たち。潔くて、尖ってて、不敵な黒猫の魅力が炸裂したステージに、こちらまで無敵になったような錯覚に陥った最高のアクトだった。(齋藤美穂)