祝ミツキ、リアーナ、初のアカデミー賞ノミネート! 祝『エブリシング・エブリウェア~』が最多11部門ノミネート。アジア人初主演女優賞受賞にも期待! オスカーノミネーションの雑感。

祝ミツキ、リアーナ、初のアカデミー賞ノミネート!  祝『エブリシング・エブリウェア~』が最多11部門ノミネート。アジア人初主演女優賞受賞にも期待!  オスカーノミネーションの雑感。

毎年恒例のオスカーのノミネーションが発表された。今年は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が11部門で最多ノミネートされた他、アジア人俳優が計4人ノミネートされる快挙を達成。ミッシェル・ヨーが受賞すれば、アジア人女優として初の主演女優賞受賞となるので盛り上がる!

全ノミネーションはこちら。

以下、音楽部門など雑感。

1)祝、歌曲賞でミツキリアーナなどが初ノミネート。

歌曲賞にノミネートされたのは以下の5曲。

――『エブリシング〜』に起用されている”This Is a Life”でデイヴィッド・バーンとミツキがノミネートされた。おめでとうございます! バーンは、『ラストエンペラー』の時に坂本龍一と一緒に作曲賞でノミネートされたことがあるので、これで2回目。

作曲賞でノミネートされたSon Luxもツイート。

「『エブリシング〜』でスコアを書き、デイヴィッド・バーンとミツキと曲を書けただけで十分楽しかったのに! オスカーにノミネートされるなんて嬉しすぎです。世界でこんなことが起きるなんて思ってもみなかった。どうもありがとう!」


デイヴィッド・バーンは、ポッドキャストでこの曲についてこのように語っている。
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/awards-chatter-podcast-david-byrne-everything-everywhere-all-at-once-1235299930/

「彼らの方からアプローチしてくれた。僕はダニエルズ(監督)の前作『スイス・アーミー・マン』を観ていて、彼らが次に何を作るのだろうと楽しみにしていた。また、作曲のSon Luxも知っていて、彼らのライブも観ていた。それで監督とSon Luxの関係者の両方から連絡があって、僕らが作曲をするんだけど、最後に曲が欲しい、とお願いされた。その瞬間に”イエス”と言いたかったけど、彼らがラフカットを送るのでまずそれを観るまで待ってください、と言うので、観せてもらった。観たらこの映画何についてかわかりますから、って。それでこの映画が何についてなのか何の警告もなしで観たんだ(笑)。まだ特殊効果も音楽もなしの状態でね。それで、最初の20分を観て、『これは面白い! アジアの家庭についての映画を作ったのか』と思った(笑)。家族の話だと思ったんだ。でもそこから突然バン、バン、バン、と違うディメンションが登場して、うわ、なるほど、って思った。

それで僕が最初に彼らに言ったのは、『この映画がいかにエモーショナルなのかを指摘するような曲にしたい』だった。それはこの映画を観てみんなが最初に思うことではないと思うから、ってね。みんな、なんて変てこな映画なんだ、と思うはずだ。実際そうなんだけど。でもその水面下で、この映画には心がある。だからすごく感動的だ。だからそう思って劇場を去って欲しいと思う、ってね。いかに変てこだったかではなくて。

それで彼らが歌詞とメロディのアイデアを少し送ってきた。それと、ミツキとデュエットして欲しいと言われたんだ。僕は彼女の知り合いではなかったけど、大ファンだったから、即『もちろん』って返事した。そこから、さて、どうやって作るのかということになった(笑)。

彼らがまず彼女に、彼らが書いたメロディの入ったトラックを渡して、彼女がボーカルを完成させて、それがすごくゴージャスだった。それを聴いたら、『あれ、僕のやることって残ってる?』って思ったんだ(笑)。まずひとつ明らかだったのは、ハーモニーをしよう、だったんだけど(笑)。それと、彼らに、彼女のボーカルの間で歌ってみて欲しい、と言われた。それで、彼女のメロディへのカウンターメロディを書いてみたんだ。彼女の歌っていることに合うような歌詞も書いた。メロディは、彼女の声に重なって邪魔したくはないから、ちょっとだけ重なるものにしようとした。つまりパズルみたいな感じだったんだ。それで色々試した後に彼らに渡して、彼らからは歌詞のないメロディも送られてきて、それに合う歌詞も書いた」

ところが、彼が曲を書いているのに、公開されてからすごく多くの友達に「この映画観た方がいいよ!」と言われたそう(笑)。「うん、僕が曲を書いてるんだよね、と思った」と語っていた。「でもこの映画はまさにそうやって口コミで人気を獲得した映画だった。みんなが観ている間中、口が塞がらなくなって、友達に『観た方がいいよ』と言ったことで広がったんだ」


―― それから、これが初のノミネートとなったリアーナ!

サプライズで発表された『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の曲でノミネートされた。リアーナ自身の曲としてはなんと6年ぶりで、それがノミネートされたわけで、復活早々めでたい!

リアーナが、曲をシェアした時のリアクションビデオを公開。

この曲は亡くなったチャドウィック・ボーズマンに捧げられた曲で、作曲家のラドウィッグ・ゴランソンが、監督のライアン・クーグラーとナイジェリアのラゴスを訪れた際に思いついた曲。それに、クーグラーにも歌詞を書いて欲しいとお願いしたところから始まった。なので、彼の名前もクレジットされている。それから数ヶ月後にリアーナとTemsに送られて曲が完成。

ラゴス生まれのTemsはこの曲について、

「ライアンと話して、曲と映画の方向性を聞いてから、これまで自分の人生で失った人を包み込むような温もりのある曲にしたいと思った。もしその人達に今自分が歌を歌ってあげられたら、どんな曲になるのかを想像してみた。彼らがいなくて寂しいと言う気持ちを表現できたらどんな曲になるのかも。リアーナは長年私のインスピレーションとなった人だったから、彼女が実際にそれを曲で伝えてくれた時には、ものすごく光栄に感じた」

https://variety.com/2022/music/news/rihanna-song-black-panther-wakanda-forever-1235412876/

公開時のレッドカーペットでリアーナは、曲で「参加できて光栄に思っている」と語っていた。


――『RRR』は、インド映画の曲としては初!のノミネーションだ。

世界中で大盛り上がりした『RRR』といったら音楽は、映画のアイデンティティの半分くらいあると言える印象。アメリカでこの映画がヒットした大きな理由のひとつも、TikTokチャレンジがあったためだ。なので、曲がノミネートされて嬉しいと言うか当然だ!!

作曲家はM.M.Keeravani。ただ、もし受賞してもインド人の作曲家としては2人目になる。イギリス映画『スラムドッグ$ミリオネア』でA.R.Rahmanが受賞したことがあるから。

作曲家のKeeravaniは、西洋での大ヒットの理由をVarietyで分析している。
https://variety.com/2023/awards/news/rrr-oscar-nomination-naatu-naatu-best-original-song-1235500136/

「ビートが、6/8で西洋の曲でよく使われるビートではなくて珍しいからだと思う。よりインドやアフリカで聴かれるビートだ。もっと正確に言うと、北インドではなく、南インドで聴かれるビートだ。それで、”Naatu Naatu"ではそのビートにさらに別次元のビートに発展している。だから、西洋の人達はほとんど聴いたことがないものだったのが、人気の理由だと思う」

さらにシンガーの2人、「Rahul SipligunjとKaala Bhairavaも偉大だったから」と。また今回の受賞を受けて、「曲という自分の子供がどんどん成長していくのを観ているようで、光栄だ」と喜びのコメントを発表していた。
https://deadline.com/2023/01/rrr-composer-songwriter-m-m-keeravani-on-his-historic-oscars-song-nomination-for-naatu-naatu-oscars-1235240028/


―― レディー・ガガは、『トップガンマーヴェリック』でノミネート。彼女は、歌曲賞でノミネートされるのはこれで3回目で、”Shallow”で一度受賞している。また俳優としても、『アリー/スター誕生』でノミネートされている。去年は『ハウス・オブ・グッチ』でも女優としてノミネートされると誰もが思っていたけど、残念ながらノミネートされなくて話題となった。

ガガはこの曲でグラミー賞にもノミネートされていて、自分の心にすごく近い曲だから、泣いてしまう、とコメントしていた。


――『Tell It Like A Woman』でノミネートされたダイアン・ウォーレンは14回目のノミネートで超常連。1度名誉賞を受賞しているが、楽曲では受賞していない。過去には、『アルマゲドン』で、エアロスミスの”ミス・ア・シング”などでノミネートされている。

ショートリストには、ザ・ウィークエンドや、LCDサウンドシステムテイラー・スウィフト、セリーナ・ゴメスなど超豪華なメンツも入っていたが、今回は残念ながらノミネートされなかった。

リアーナに、ミツキに、『RRR』など、楽曲賞のアーティストにはぜひオスカーで、パフォーマンスしてもらいたい。


2)作曲賞

今年は常連のトレント・レズナーも2作で作曲していたけど、残念ながらノミネートされなかった。またスピルバーグ監督『フェイブルマンズ』でノミネートされたジョン・ウィリアムズは90歳で史上最年長のノミネートということ。ちなみに、スピルバーグは、ジョン・ウィリアムスのドキュメンタリーを現在作っているところだと最近発表していた。

このリストでは、『タール』や『ウーマン・トーキング私たちの選択』で作曲を手掛けた女性作曲家ヒドゥル・グドナドッティルも入ると予想されていたが、ノミネートされなかった。彼女は『ジョーカー』で女性としては4人目のオスカーを受賞していた。


3)その他雑感。
とにかく最多ノミネートされた『エブリシング〜』には、作品賞はじめ、ひとつでも多くのオスカーを取って欲しいと個人的には思う。とりわけ、主演女優賞のミッシェル・ヨーには絶対に受賞して欲しい。取れば、アジア人女優として初の快挙となる!

ミッシェル・ヨーのコメントも感動的だ。

「ここまですごく時間がかかったけど、これはすでに、私のこと以上のものになっている。現時点でも、アジア人の人達が私のところに来て、『絶対に取れるから。私たちのためにあなたがやってくれる』と、いつも言われる。私にもみんなが言いたいことがすごく分かる。みんな、自分たちは認識されていないと思っているんだと思うから。声が聞かれていないと思っていると思うから」



―― その他ノミネートされるべきだったのにノミネートされなかったと言う批判で一番多かったのは、まず女性監督が1人もノミネートされなかったことだ。

オスカー94回の歴史で女性監督が受賞したのはたった3回。その2回は去年と一昨年。2回連続であげたから今年はいいだろうと言わんばかりだ。ノミネートされるべき監督がいたのに、されなかったのが問題なのだ。怒りすら感じる。ノミネートされるべきだった監督の筆頭であるサラ・ポーリー(『ウーマン・トーキング』)は、「期待してなかったから歯医者さんに行っていた」とツイートしてて素敵だ(笑)。

―― また今回は、アジア人俳優が4人ノミネートされたのは嬉しいが、黒人俳優が主演部門でゼロ。まるで、マイノリティ枠が決まっていて、それを満たしたら、残りは白人と決めているかのようだと批判。

アカデミー賞授賞式は、日本ではWOWOWで中継されるようだ。
3月13日(月)午前7時半から放送。
https://www.wowow.co.jp/extra/academy/



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祝ミツキ、リアーナ、初のアカデミー賞ノミネート!  祝『エブリシング・エブリウェア~』が最多11部門ノミネート。アジア人初主演女優賞受賞にも期待!  オスカーノミネーションの雑感。
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