少し前まで、ナイン・インチ・ネイルズ(NIN)の新作を作る気がしない、と言っていたはずのNINトレント・レズナー。ファンをしょんぼりさせていたけど、いきなり何か降りてきたようで、NINの新作を開始したそうだ。GQ最新号の表紙&インタビューで語っている。GQの表紙なんてちょっと違和感だけど、グローバルクリエイティブアワーズ特集で彼らが選ばれたようだ。
それで早速売っていたので買って読んでみたのだけど、NINの新作制作どころか、ファッションブランド立ち上げ、新会社設立、独自フェス開催、映画制作開始、TVゲーム会社とコラボ。さらに映画2本のサントラも手掛けている。数年かけて準備してきたことらしいのだけど、傍目からは、さすが極端から極端に走るトレント・レズナーという感じだ。
それぞれもう少し具体的に書き出してみると。
1. NIN新作制作開始:NINの新作の「アイディアがすでにある」と。「サントラを手掛けていたおかげで、この数年間はそうではなかったけど、NINの新作に対してすごく気持ちが盛り上がっている」と。
2023年6月に配信されたリック・ルービンとのポッドキャスト”Tetragrammaton”では、それとは逆で、今のカルチャーの中では、音楽の重要性が感じられないと語っていたのに、この記事を読むとそれでも、月曜から金曜日の毎日午前11時から午後7時まで、アッティカス・ロスとスタジオに籠もってそれが何かは分からないけど、作業をし続けていたのだそう。
つまり、音楽の重要性が感じられないと言っていたが、だから、その中で何ができるのかを探求していたということなんだと思う。その解答を彼らなりに見つけたということだろう。
2. 夏にTシャツのブランド立ち上げ:有名なデザイナーとのコラボでTシャツのブランドを立ち上げるそう。そのデザイナーにまだ名前は明かさないでくれと言われていると。誰だろう? またインタビューの中で、2人とも真っ黒の服を着ていたので、このファッションブランドに色はありますか?と訊いたら、「もちろんない」とトレントが即答していて笑った。
3. NINが新会社設立。IPでストーリーテリング。ただし自伝ドキュメンタリーではない:この2年間かけてひとつずつ作ってきた新会社があるそうで、NINのIPを使ってできるストーリーテリングを行っていくそう。ただし、バンドのドキュメンタリーではないと。みんなが考えるようなものではないそうだ。彼らの長年のアートディレクターJohn CrawfordとプロデューサーJonathan Pavesiも協力。NINを違う角度から検証するものだと。
4. TVシリーズ制作中:観ている方もいるかもしれないが、個人的にもここ最近で最も好きだったTVシリーズ『The Bear』(*番組内で使われている曲がX世代のツボなので、紹介したかったのですが、しそびれています。すいません)。なんとそのクリエイターのChristopher Storerと番組を制作中。
5. 映画制作中:ホラー映画監督マイク・フラナガンと映画制作中。彼の最新作は、スティーブン・キング原作の『The Life of Chuck』と、クリストファー・パイク原作の『The Season of Passage』がある。その次の作品だろうか?
6. 短編映画制作:アーティストSusanne Deekenの短編映画を制作中。
7. 音楽フェス開催:「そのフェスで作曲家として初めてパフォーマンスをする。その他面白いメンツを集める」。当初今作っているNINの新作がそこで聴けるフェスを開催するのかと思ったけど、ちゃんと記事を読んだら違うのかもしれない。つまり、サントラなどで作ってきた曲をパフォーマンスするということだろうか? インストなどのアーティストを集めたフェスを開催するということかも?
8. レコードレーベル立ち上げ:そのフェスと同時にレコードレーベルも立ち上げるそう。
9. Epic Games(ビデオゲーム会社)とのコラボ:ただし、ビデオゲームを開発しているわけではないそうで、「EPICがFortnite周辺で作ったようなUEFNエコシステムの中で、アーティストとして何か面白いストーリーが語れるのではないかと思った」と語っている。
10. 映画サントラ2本制作中。1本はまもなく公開:映画のサントラを現在2本手掛けているそうで、その1本はルカ・グァダニーノ監督『Queer』。ダニエル・クレイグ主演。ウィリアム・S・バロウズ原作。
もう1本は、『The Gorge』SFスリラーで、マイルス・テラーとアニャ・テイラー=ジョイ主演。監督はスコット・デリクソン。
さらに、もう完成している作品は、同じくグァダニーノ監督の『Challengers』(アメリカ公開4月26日、日本公開6月7日公開)。ゼンデイヤ主役。この作曲についてトレントが言うには、監督が「映画全体を通してテクノが爆音で流れているっていうのはどう思う?と言って、結局その通りになった」と。この予告編からはまだよく分からない。
これで全て網羅しただろうか? トレント自身も忘れないようにリストを持ってインタビューにのぞんでいるくらいだ。
このインスピレーションの背景には、『ツイン・ピークス The Return』のサントラで、デヴィッド・リンチの自宅を訪れことにあったよう。アッティカス曰く、「彼は年齢的には歳かもしれないけど、家に行った時に、彼に歳取ったと思う部分がどこにもなかった」と。トレントが「まだ自分たちは完全に打ちのめされたわけではない。それがエキサイティングだった」と。
ファンとしても、こんなニュースが飛び込んでくるとはめちゃくちゃエキサイティングだ。
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