【10リスト】King Gnu、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】King Gnu、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
東京藝術大学でチェロを専攻していたものの、違和感からすぐにそこを去り、別のところに表現者としての道を見出していった常田大希(G・Vo)。常田と同じ大学で声楽を専攻し、舞台にも挑戦していた井口理(Vo・Key)。ビッグバンドに所属したり、セッションミュージシャンをしたりしながら主にジャズ界隈で経験を重ねてきた新井和輝(B)。幼少期から自宅の電子ドラムを叩いていたり、プロのダンサーを目指してダンススクールに通っていたりと、根っからのパフォーマー気質な勢喜遊(Dr・Sampler)。そんな4人によるバンドがKing Gnuである。出自の異なるプレイヤー4人によるあらゆるジャンルを呑み込んだサウンドは、これまでの日本の音楽シーンではまず鳴っていなかったもの。彼らの登場は、私たちを大いに驚かせ、興奮させ続けている。この記事では、バンドのディスコグラフィの中から10曲を紹介。クリエイティブチーム・PERIMETRONによる先鋭的なMVとともに楽しんでほしい。入門編としてこの10曲を押さえたあとには、他の曲を聴き進めることをおすすめする。(蜂須賀ちなみ)

※2022年1月17日 更新


①Tokyo Rendez-Vous

1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』の1曲目。AメロからBメロにかけてはワイルドな声質の常田がラップまじりで畳みかけ、サビでは井口がのびやかな歌声を空に放ち……と、King Gnuの大きな特徴=ツインボーカルが早速炸裂している。マイクではなく拡声器に向かう常田が《走り出す山手に飛び乗って/ぐるぐる回ってりゃ目は回る》と歌っているように、King Gnuがこの曲やアルバム『Tokyo Rendez-Vous』を通じて描いた「東京」像は、薄暗い地下やごみごみとした雑踏を彷彿とさせるような、混沌としたもの。シティポップによって描かれてきた洗練された都市像とはまた異なる趣があった。

②Vinyl

“McDonald Romance”とは対照的に、この曲は食ったリズムが特徴的。シンコペーションを多用したキメは聴いているとクセになり、自然と身体がノッてしまうものだ。また、イントロのドラム、間奏のギターソロ、ラスサビ突入時のボーカルのロングトーンなど、各パートの見せ場が多いのも嬉しい。こう書くとベースは目立たないのかという話になるが、むしろその逆。裏メロのごとく動きまくりつつ、音のトメハネを効かせ、リズムの線をしっかりと見せ……と多様な働きをするベースラインは、この曲を影で支配するような存在だ。個人的には3:46~49が特にヤバいと思う。ちなみにここまで紹介した3曲はすべて『Tokyo Rendez-Vous』に収録されている。改めて強調しておくが、『Tokyo Rendez-Vous』はKing Gnuにとって初めてのアルバムである。それだけで、King Gnuの登場がバンドシーンにとってどれだけ衝撃的だったものだったか、お分かりいただけることだろう。

③Flash!!!

リリースは2018年7月だが、ライブではそれ以前から頻度高く演奏されていた曲。シンセの高音がけたたましく鳴り、《It’s Flash!!!》のコーラスがインパクトを残すサイケデリックな音像に、ギターロックサウンドが掛け合わさることで、極限の疾走感が生まれている。そのスピード感はまさに下り坂を駆け抜けているようであり、ブレーキが折れているかのようでもある。一瞬の輝きのために身を焦がす様を歌った歌詞には、「ダサくなる前に終わらせる」と公言しているバンドの姿勢を投影しているのか。イントロ直前にある「Ladies and Gentlemen」、「King Gnu」という音声も示唆的だ。

④Prayer X

TVアニメ『BANANA FISH』のEDテーマとして書き下ろされた楽曲。ストリングスの音色は曲の持つ物悲しさを際立たせているほか、イントロおよび間奏のグリッサンド+トレモロ的な奏法が強烈な印象を残している。「物語の登場人物たちも現実世界の僕たちも、生きていく中で苦悩し、もがき、心の何処かで祈っています。その先に待っているのが絶望なのか救いなのかはわからない。でも今は祈ることしか出来ない。“Prayer X”は誰しもが持つ葛藤と祈りの歌なんだと僕は思います」というのは、『BANANA FISH』公式サイトに掲載されている井口のコメント。祈るとは、神に頼む行為とは、自分にできることが他になくなってしまい、どうしようもなくなってしまった者が最後に辿り着く境地である。「救い」とは何なのかを問うアニメーションMVも考えさせられるような内容だ。

⑤Slumberland

2ndアルバム『Sympa』収録曲で、2019年2月のテレビ朝日『ミュージックステーション』初出演時に演奏した曲。“Tokyo Rendez-Vous”に通ずるダークな雰囲気のある曲であり、イントロで印象的なリフを鳴らし、(編成外の楽器も込みで)小節の頭でキメを打つなど、手法的にも共通する部分が見受けられる。歌詞は、見せかけだけのTVショーや、それにやすやすと騙され、熱を帯びる大衆を皮肉ったもの。サビの《Open your eyes, open eyes wide.(目を覚ませ、目を凝らせ)/Rock‘n’roller sing only ‘bout love and life.(所詮ロックンローラーは愛と人生しか歌えないんだ)》というフレーズも良い。あえて英詞にし、核心を開けっ広げにしない感じにグッとくる。

⑥The hole

同じく『Sympa』より、アルバムのクライマックスを彩る壮大なバラード。常田曰く「J-POPのバラードを書こうという意識で作った」らしく、制作の際にMr.Childrenやサザンオールスターズ、宇多田ヒカル、椎名林檎をはじめとしたJ-POPの名曲を改めて研究したこと、特に歌詞における各ソングライターの個性ある言い回しに感銘を受けたことを明かしている。それを踏まえてキーフレーズをひとつ挙げるとすれば、やはりサビラストの《僕が傷口になるよ》だろうか。自分の弱いところ、醜いところを相手に見せることができたのだとしたら、そうして互いを認め、受け容れ合うことができるのだとしたら、そういう関係性のことを愛と呼ぶのかもしれない。

⑦白日

日本テレビ系ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』の主題歌。タイトルが想起させるのは「白日に晒す」という熟語。二度と会えなくなってしまった大切な人に対する自分の行いを《罪》と呼ぶ主人公の切実な想い、後悔の深さを、井口がその透き通るような声で歌っている。バラードにしては速めのテンポ設定、曲を前進させるリズム隊の在り方は、無慈悲に流れる時間を表現しているよう。両者のコントラストが切なさをかえって増幅させる。“白日”は配信リリースから約9ヶ月でストリーミング総再生回数1億回を突破したほか、YouTubeのMVは公開から約9ヶ月半で1億回再生を突破。この頃には既に、次の時代を作るであろう存在としてロックバンドファンに知られていたKing Gnuだが、“白日”をきっかけに、熱心な音楽リスナーではない一般層にまで認知を広げたと言って差し支えないだろう。

⑧飛行艇

ANAの国内版TVCM「ひとには翼がある」篇CMソング。どっしりとしたビートや上物の音の歪みが特徴的なアンサンブルは力強く、バンドサウンドならではの泥臭さが打ち出されている。Aメロ→Bメロ→サビという構成ではなく、ヴァース・コーラス形式であるのも特徴的。常田の低音ボーカルと井口の高音ボーカルを分かりやすく対比させることで、地から飛び立つようなエネルギーを生んでいる。スケールの大きなサウンドは、ライブで――しかもライブハウスではなくもっと広大な会場で観客が拳を突き上げシンガロングする光景をイメージさせる。常田は、かつてオアシスがイギリスで大合唱を起こしたように、King Gnuの曲で大合唱を起こしたいのだ、そういう種類の熱狂が好きなのだという趣旨の発言をよくしている。そういう意味ではバンドの思想の根に近い曲なのかもしれない。

⑨Teenager Forever

3rdアルバム『CEREMONY』の発売に先駆け、2019年12月にデジタルリリース。当初からのライブ定番曲であり、ファンは音源化を待ち望んでいた。アコースティックギターのカッティングがどこまでも軽やかなAメロ。一斉になって刻む8ビートやコーラスの譜割りでつんのめりそうになるほどの高揚感を体現する間奏。Bメロの常田ボーカルによる金言のようなフレーズ。マイナーコードに切り替え、トーンを変えてからサビで歌われる「今は永遠でない」、「だからこそ大事にすべきなんだ」という真理。そしてアウトロの急加速――。このように、約3分の中にたくさんのドラマが詰まっている。ライブで聴くとバンドというロマンについて歌っているように聴こえて、それはそれで感動的だが、「人生とは何たるか」というもっと大きなテーマを歌った曲でもある。(蜂須賀ちなみ)

⑩一途

『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌として書き下ろされたこの曲。歌詞には原作のキーワードや台詞の引用がちりばめられていて、ここまで作品に寄り添うかたちでタイアップ曲を書き下ろすというのもKing Gnuでは珍しい。常田の中にそれだけ共感する部分があったということだろう。痙攣するようなギターリフから始まるアレンジは最初から最後まで緊張感をキープする一方目まぐるしく展開し、そのサウンドがリスナーを圧倒する中、すべてを捧げる文字通り「一途」な愛のかたちが繰り返し描かれていく――こんなにもヒリヒリとした、切羽詰まった「純愛ソング」が他にあるだろうか。登場人物の想いと同時に、ここには常田の音楽やアートへのピュアな愛情が炸裂しているようにも思える。(小川智宏)
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