年末特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2021年の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表! 【第5位】


2021年も、残りあとわずか。

新年へのカウントダウンが盛り上がるこのタイミングで、ロッキング・オンが選んだ2021年の「年間ベスト・アルバム」ランキングの10位〜1位までを、毎日1作品ずつ発表していきます。

年間5位に輝いた作品はこちら!
ご興味のある方は、ぜひ本誌もどうぞ。

【No.5】
『メディスン・アット・ミッドナイト』/フー・ファイターズ



ロックが不滅であるための特効薬

この未確認飛行物体が発見されたのはカート・コバーンが天に召された1994年のこと。当初は「ニルヴァーナのドラマーがフロントを務めるバンド」として注目されたわけだが、まさかそのバンドが四半世紀以上にわたり爆走を続け、現代のロック・アイコンとなったデイヴ・グロールがロックンロールの殿堂入りを二度も果たすことになるとは誰も想像していなかったはずだ。
 
去る2月に発売されたこの最新作は、このバンドにとって10枚目のオリジナル・アルバムにあたるもの。常にロックのど真ん中を体現しているようでありながら、時流を踏まえつつ絶妙に変化を重ねてきた彼らがここで形にしてみせたのは、重厚な構築感やドラマ性ではなく、夜中に軽く酒でも呑みながら一緒に歌い、踊りだしたくなるような音楽。それが運悪くコロナ禍で自由な外出もままならない状況下に登場することにはなったが、結果的にはステイ・ホームを強いられた日常においてロック・ファンの憂鬱を解消してくれる特効薬となった。

残念ながら自己3回目となる全米アルバム・チャートでの首位獲得は叶わなかったが、2002年の『ワン・バイ・ワン』以降全作品をトップ3に送り込んでいるのは見事としか言いようがない。欧州各国でもトップの座を独占しており、この成績は必ずしもロックが音楽シーンの主流とはいえない昨今において快挙と言えるだろう。
 
とはいえデイヴはロックの伝道師としての使命感にばかり突き動かされているわけではなく、夏にはレコード・ストア・デイに合わせての企画商品としてザ・ディー・ジーズ名義での作品も発表。ビー・ジーズ等の往年のディスコ・ヒットのカバーが詰め込まれた同作は、本作での“踊れるロック”から枝分かれした先にあるものとも解釈可能だし、そうしたフットワークの軽やかさ、ジョークか本気かわからない遊び心に溢れたセンスは少しも失われていない。
 
音の構造的にはどこか「ポップ・スターによるロック・アルバム」といった印象も伴う本作の作品像は、そんなデイヴと、ポップ畑のトップ・プロデューサーのひとりであるグレッグ・カースティンとのタッグが功を奏したもの。バッキング・ボーカルの豊かさも特徴のひとつだが、ライブでこの曲たちに声を重ねながら踊ることのできる日の到来が、待ち遠しくてたまらない。(増田勇一)



「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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