米アンダーグラウンドから噴出した90年代最大の革命であるグランジムーブメントの象徴ニルヴァーナ。英国カルチャー史最大の狂騒劇となったブリットポップの英雄オアシス。ロックに再び新たなグルーヴ革命を起こしミクスチャーの王者となったレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。西海岸パンクシーンの叩き上げからメインストリームに大旋風を巻き起こしたグリーン・デイ。細分化へ向かいジャンルそのものが瓦解しかけていたヘヴィメタルシーンから、新たにエクストリームなヘヴィネスで天下を取ったパンテラ――ポップミュージックの歴史において90年代とは、彼らだけに限らず幾千の「ロックバンド」たちが主役となり世界を突き動かした黄金の時代だ。
90年代バンドたちの革新性はその後00年代から10年代にかけ多くのフォロワーを生んでいく。しかしオリジネイターたちの模倣や縮小再生産に陥り求心力を失っていくロックはやがてインディの枠へ閉じ、主役の座をポップやヒップホップに奪われていく。例えば89年生まれの僕が思春期にロックに出会った時には、とっくにグランジもブリットポップも終焉しガレージロックリバイバルを迎えていた。しかし、それはあくまでもリバイバルのムーブメントであり、90年代というロックが本当に主役となり革命を起こしていた最も近い最後の時代への憧れには囚われつづけてきた。
そして30年経った現在においても、ニルヴァーナは永遠のロックアイコンとして愛され続け、グリーン・デイとレッチリは現役のまま世界中を今も駆け回り、復活を遂げたパンテラはそのレガシーを世界にふたたび刻みつけている。さらに、きたる2025年のオアシス・カムバックイヤーにむけて、このロックバンド栄光の90年代という熱狂に今ふたたび総力特集で迫りたい。(鴨志田翔)
ロッキング・オン12月号 伝説の90年代バンド特集
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