Ｊ・Ｒ・Ｒ・トールキンは、原作『ホビットの冒険』を自分の子供たちに読み聞かせるために書いたという。
きっとトールキンは、子供たちに「実直に平穏ばかりを求める人生はつまらない、人生は冒険だ」ということを伝えたかったと同時に「その冒険の中で自分の真面目さや優しさが武器にもなることに気付くことができる」ということも生真面目で優しいホビットのビルボ・バギンズの冒険によって伝えたかったのだろう。
紆余曲折ありつつ『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のピーター・ジャクソン監督によりそれが映画化されたこの『ホビット 思いがけない冒険』はトリロジー第1作にしてそのテーマをてんこ盛りのエンターテインメントの中で表現した見事な作品だった。
それだけに残り2作にどこまでさらなる深みと広がりが用意されているのかが気になるところだ。
わざわざ2部作で進んでいたものを途中で3部作にしたぐらいだから期待したいところだ。
あと今回はドワーフたちの存在に導かれて『ロード・オブ・ザ・リング』とはまた違う土着性と郷愁に溢れたハワード・ショアの音楽や、HFR-3D（ＨＦＲ＝Higher Frame Rate。1秒に24フレームが通常のところをそれ以上のフレーム数で撮影したもの。『ホビット』は1秒に48フレーム）撮影によるリアルでダイナミックで美しい映像など見所満載。（古河）