新曲のタイトルが“ラムジュート”だと知り、聞き慣れないその単語を検索にかけた。調べると、泳ぎを止めると酸欠で死んでしまうマグロの呼吸法「ラムジュート換水法」のことだとわかり、よくもまあ皮肉のような憂いのような、Dannie Mayらしい単語をピックアップするなと、曲を聴く前からタイトルだけで期待が膨らんだ。
日常の生きづらさを見なかったことにして、無理にポジティブに捉えようとするとかえって逆効果で、「世の中ってクソだよね」って友人が笑いながら口にした言葉にむしろ、自分だけの悩みじゃなかったんだと安心して気持ちが楽になるみたいな経験に心当たりがあるが、“ラムジュート”を聴いていると、そんな開き直ることでしか得られない希望みたいなものを感じる。
喜びはともかく、悲しみの味なんて知る必要がないように思うけど、何が自分を悲しませているのか、なんでこんなに悲しいのか、突き詰めなければ同じ悲しみを繰り返すだけで対処することも打開することもできない。昨日よりいい自分であるために、今あなたがするべきことは何か。それを突きつけられるような曲だ。
でも、終盤のサビで《明日が怖くて恐れて/震えてるなら/隣で歩こう》と歌っているところにこそ、この曲の優しさというか本心を感じる。確かに自分の問題は自分でしか解決できない。だけど弱音はいくら吐いたっていいし、音楽はいつでもあなたのそばで寄り添うことができると、心強い味方になってくれる。
音づくりの面では、スクラッチをアクセントに取り入れたいい意味で焦燥感に駆られるようなビートと、マサ(Vo・G)と田中タリラ(Vo・Key)の歌い回しもいつにも増して感情表現が豊かになっている。9月にフルアルバム『Magic Shower』をリリースしたばかりだが、Dannie May自身もまた、泳ぎ続け進化し続けていることをこの曲で証明している。
Dannie Mayは先月アルバムを引っ提げたリリースツアーを終えたばかり。ツアーファイナルである渋谷CLUB QUATTRO公演のライブレポートをrockinon.comで現在公開中なので、こちらもぜひご一読を。(有本早季)