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聴き手に猛烈にコミュケーションを求めている音楽である。世界が思い通りになることなんてないと知りながら、それでも「自分」を消すつもりは毛頭ない――そんな意志に満ちた2ndアルバム。1曲目“マジックシャワー”で、マサ(Vo・G)は《メロディ メロディ 宙を舞え/言葉がもう一歩離れた所まで届くように》と作中随一のポップサウンドに大きな理想を乗せるが、田中タリラ(Vo・Key)は“強欲”で《あの子が欲しい》《金が欲しい》と欲望を吐き散らし、その隙間からは狂おしいほどの生への飢餓感が浮かぶ。そしてYuno(Vo・Kantoku)は“Night Flower”に、《きっとまだ僕らはカナリア/暗い部屋からいつかは抜け出せる》と、密室的な世界を亡霊のように彷徨う人間の姿を描写する。ラスト2曲が素晴らしい。“カオカオ”と“肌合い”。この2曲は、あらゆる鎧を脱ぎ捨てた果てで、それでもなおその手に残る「希望」と呼びうるものについて、何がどうあろうと諦めるわけにはいかない「未来」についての歌である。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年11月号より)
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