感傷的な空気はなかった。
まるで雲が速いスピードで流れていくように、ただ素晴らしい曲の数々が流れていった。
ギターのストロークはどこかから聞こえてくる笑い声や深呼吸や団欒みたいでもあったし、ただ単にギターの音みたいでもあった。
バカみたいな言い方だが、小山田壮平のギターを聴いていると、言葉みたいなギターだなと思うこともあるし、ギターらしいギターだなと思うこともあって、それは壮平の才能だと思っていた。
歌もそうだ。
彼の歌は言葉そのものだなと思うこともあるし、言葉に意味のないまるで風の音みたいに聞こえることもあって、それこそが小山田壮平なんだと思っていた。
だが、今日はとてもクリアに聞こえた。
歌は歌らしく、メロディはメロディらしく、ギターはギターらしく、ベースはベースらしく、スネアはスネアらしく、シンバルはシンバルらしく、「ありがとう」という言葉は感謝の言葉らしく聞こえた。
何でかはわからないけれど、僕の中でこの日に向けて何かが整理されていたのかもしれない。
いや、すべての音と言葉をきれいにそのまま覚えておきたいと思っていたのかもしれない。
音楽は素晴らしいものだ。
音がきっと今日の寒さや武道館の外の雨をまた思い出させてくれると思う。
何かの間違いのようにあっという間で、振り返れば当たり前のようにありのままに時間が過ぎた2時間半だった。
ただただ、いい曲だなあ、なんていい曲なんだろうなあ、と思い続けて2時間半が過ぎていってしまった。
3人が生んだ曲はただただ素晴らしかった。
次号JAPANでこの日のライヴレポートをお届けします。待っていてほしいです。