若者は大志を抱かない


若者というと、基本的には未来に胸膨らませ、熱く、希望に燃えているものだとされている。
しかし、誰もが同意してくれると思うけど、そんなことはない。
というか、むしろ若者は、日に日にはっきりとしてくる世界の理に幻滅し、
自分の無力に絶望し、明日の不確かさとその無限とも思える間延びした時間の巨大さに慄いている存在だと思う。
だから、その歌は、決して若いからといってキラキラするものでもないし、
そうなっていなければならないものでもない。
ポピュラー・ソングにおいては、そのような「役割」を負わされ担う覚悟もあるだろうが、
リアルであることをまず第一の前提とするロックにおいては、
その反対に、疲れ果て、うなだれ、まるで老成したかのような音が彼ら若者によって鳴らされるのは必然なのだ。

優れたロック・バンドの優れたデビュー・アルバムがいつもそうだったように、
このいまだティーンエイジャーの新人、Bombay Bicycle Clubのファーストが、
どこか枯れたようなサウンドをまとっているのはそんな理由からではないだろうか。
驚くほどこなれたアレンジと簡潔でいながら聴く者の奥底にすっと突き刺さってくるメロディ、
どの曲も忘れがたいフックと、そしてもちろん、もっとこのバンドの音を聴きたいと思わずにいられない明日の予感を感じさせながら、
しかし、そこにはすでにうそ臭い夢や希望を信用していない者の鳴らす眼差しがある。

日本盤がようやく12月にリリースとのこと。
初の来日はその4日後、12月6日(日)のBritish Anthemsだ。