The Dead Weatherの新作は途方もない!
2010.04.04 21:30
先日の来日公演、チケットを買っていたにもかかわらず行けなかったことをええ、ええ、あとでたっぷりそういう気持ちになるでしょうよと了解済みの後悔をただいま絶賛かみしめ中(いろいろあるんですよ、人生って)。小池宏和氏のライブレポを読むにつけ(http://ro69.jp/live/detail/32795)、その後悔はいままたジャック・ホワイトのアンプを通したみたいにバカでかく増幅されてしまったわけだけど、その夜演奏されていた新作からの楽曲がとりわけ凄まじかったというレポは、今届いたアルバム音源を目の前に、この世の中でもこれほど確信的なことがあろうかいやないという反語を意味もなく使ってみたくなるほど心の底から確信された。
The Dead Weatherのニュー・アルバム『Sea Of Cowards』は凄い。もちろん、ジャック・ホワイトの関わる作品はすべてにおいてそうだったのだけど、このアルバムは、彼にとってちょっと違う何かの始まりを予感させるのだ。それはどういうことかというと、The White Stripesを中心に、Raconteurs、そしてこのThe Dead Weather(のファーストまで)と広げていった、これまでの構図の刷新である。もっとはっきりいうと、この構図の中心から、The White Stripesがなくなったのではないか?ということだ。そう思ってしまう理由には、The White Stripesのあのドキュメンタリーがある。10周年をメモリアルに記録したあのフィルムには、それがなにより彼ら自身にとって特別な意味を持つもののように見えてくるあまりにも多くのシーンがあり過ぎるのだ。
もっと飛躍させてしまうと、しばらくThe White Stripesはないのだろうな、ということだ。ということを、ジャック本人がようやく心に置いたのでは?ということだ。
そうした覚悟のような切り替えのような、そんな思いが、この新しいThe Dead Weatherの新作には思う様ぶつけられているように思えるのだ。Raconteursにしても、ファーストのThe Dead Weatherにしても、やはりそれはStripesを座標の中心にした、建設的なトライアルの意味合いもあったように思う。もちろん、この新The Dead Weatherが新Stripesと言いたいわけではない。そうではまったくないのだけど、この新The Dead Weatherには、Stripesとのバランス感、言い換えればStripesへの遠慮がないように思えるのだ。
このアルバムは、どこからでも凄みが飛び出してくる。どこを切っても聴き手を悶絶させんとする作り手の執念がある。ジャック・ホワイトの現時点での182%が出ている。それはつまり、Stripesがそうであるように、ジミ・ヘンドリックスを驚かせてやろうかというくらいに途方もなくアンビシャスなロックへの没入である。