MGMTはなぜ「小さい」音でライブを演るのか


いつも思うことだけど、MGMTのライブの出音はなぜあんなに「小さい」のだろうか。もちろん、音量は他のバンドといっしょなんだろうけど、ふにゃふにゃーと、へなへなーと、ちょろちょろーと、案の定、後で出てきたゼム・クルックド・ヴァルチャーズが思うさまバカでかい音を出したものだから、なおさらそう聴こえてしまう。おそらく、フジのザック後も、そういう事態(?)に陥るのは必至と思われ。

ロックなんて、とにかくデカい音を出しておけば、わたしみたいな単純な聴き手相手には格好はつくものである。MGMTはお世辞にも演奏がうまいとは言えないバンドだから、なおのこと、デカい音でごまかしてもいいのにとも思う。

でも、MGMTはそうしない。なぜか。そうしたくないから、だと思う。

説明になっているかどうかまったく自信の欠片もないが、その行為は、どこか名前を呼ばれて「小さく」返事をする子供に似ている。つまり、反逆、である。

MGMTの、特にアンドリューのあの「お腹に絶対力を入れない」歌声を聴いていると、無性にそんな気分にさせられる。あれは、抵抗なのである。そして、その行為はとても、MGMTを表していると思うのだ。

とか書いていたら、例のソニー担当氏より、打ち上げ中のMGMTの写真が送られてきたので、貼っときます。学術書を読むかように、ベンがメニューをむさぼり読んでおります。なお、この席には、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズも同席とか。豪華。

MGMTのセットリストは
Flash Delirium
Time To Pretend
Electric Feel
Kids
It's Working
Brian Eno
でした。予定ではKidsの前にIt's Workingを演りたかったみたいだけど、機材トラブルで急遽変更。ラストの曲も予定ではCongratulationsだったのをBrian Enoに変えたとのこと。

さて、その今日のメイン・ディッシュのゼム・クルックド・ヴァルチャーズについても。この20年、アメリカでもっともアメリカン・ロックをフリーキーにしたジョッシュ・オムと、この20年、アメリカでもっともアメリカン・ロックをエモーショナルにしたデイヴ・グロールという、誰が見てもスーパー・ヘヴィー・ウエイトなふたりが在籍するこのバンドが当然のように現在最強度にブルースを鳴らしまくる図というのはそれはそれは壮観、なのだけど。けれど、その横で、まるで老齢の理科の先生のようなたたずまいで、ニコニコしながらいそいそといろーんな楽器を持ってきては、巨漢のふたりを眺めつつ、気ン持ちよさそーに演奏しているジョン・ポール・ジョーンズこそが、圧倒的に異様。思わず拝んでしまいました。2時間のライブを走りきって、少しばかりヘタっていたオム&グロールが舞台ソデに引っ込んだあと、軽くスキップしながら去っていったよ、このジイさん。