2010年上半期私的ベスト・アルバム 第5位
2010.07.29 14:00
Sleigh Bellsの『Treats』を選出。
とにかくこのブルックリンの男女デュオについては、音源がリリースされる前からなにかとブログに書いてきたのだけど、ただいま現在の思いで言うなら、いまもっともライブを観たいアーティストだ。伝聞なので真偽のほどは定かではないが、そのパフォーマンスを目撃したというDAS POPの連中が言うには、トラックについてはギターを弾きまくるDerek Millerが持ち込んだiPodが直接アンプに繋げられていて(だから、あの「ほとんど限界値を超えた破壊音」となる)、そこに件のチェーンソー・ギターと、Alexis Kraussの絶叫だけでライブは構成されているのだという。
観たい。
これは観たくなるのが人の子の素直な心情というものである。何かの「簡易バージョン」みたいなこの構造が、Sleigh Bellsの完全版であるというその構えがいい。そして、そこから叩き出される音を聴けば、そのスタイルが、おもちゃみたいな部品を2,3個組み立てただけでとてつもない高性能な殺傷器具足りえてしまっていることにさらに興奮させられる。
ロック・ミュージックは、ある意味、音でどれだけのことが破壊できるか、そのことに腐心してきた音楽である。それは、このうえなく繊細なフォーク・ソングだったときもあったし、あるいは極限にまで剛性の高められたヘヴィ・ロックだったときもあった。Sleigh Bellsは、間違いなく現在最高峰のデストロイ・ミュージックである。しかもそれは、単純にバカでかい音であるばかりか、DerekのギターとAlexisの絶叫によって強引に世界を歪ませる音でもある。どこまで轟かすのかといったギャー!!!!!という声と、どこまで上昇していくのかといったギャイーン!!!!!というギターが交錯するとき、確実に世界が歪んでいくのを感じる。単純で直線的でしかなかった破壊行為に加わった、この新しい破壊の味覚は、たぶん時代を奪取しているのだと思う。