ご存知のように、米大統領選は共和党が圧勝だった。
ひとつ前のブログでは、マイケル・ムーアが、女性達の投票で大統領が決定すると予想していると書いたけど、
https://rockinon.com/blog/nakamura/210814
結果的にはそんなことにはなかった。NBCの世論調査によると、女性の投票者数は全体の53%とバイデン大統領が当選した際より1%増えたものの、女性がハリス副大統領に投票した割合は、全体の54%で、前回バイデン大統領の際の57%から、むしろ減っていた。逆に共和党に投票した女性は、前回の42%から44%と増えていた。
この結果に対して、これまでハリス支持表明をしていたアーティストが何人かコメントしている。
●ビリー・アイリッシュ:「これは女性の戦いだ」と、インスタでコメント。
“war on women"というのは、共和党が、女性から中絶の権利などを奪おうとすることに対して、反発するスローガンとして使われているフレーズだ。現時点で13州が中絶を禁止しているが、今後共和党がさらに中絶禁止を拡大する可能性が大だ。
さらにビリーは、選挙の翌日にテネシー州ナッシュビルでライブ。そこでも大統領選についてコメントしていた。
「女性を本当に本当に深く嫌う人がアメリカ大統領になってしまった」と。
https://x.com/billieeilishtrs/status/1854362925042979088
「今日朝起きた時に、こういう日に一体どうやってライブをすれば良いのか最初はよく分からなかった。だけど時間が経つにつれ、こういう時こそみんなと一緒にライブできること自体がむしろ恵まれていると思った。それで、みんなに言っておきたのは、私は、みんなのこと大好きだよってこと。それから、みんなは私と一緒の時は安全だよ。ここでは守られているから。ここいる時は安全だよ。
これから演奏するのは兄のフィニアスと何年も前に作った曲で、この世界に存在する女性への虐待について。私が体験したことであり、私の知り合いも体験したこと。それで真実はと言えば、これまでに虐待を経験したことがない女性に一度も会ったことがない。1人もいない。この曲は私が体験したことについてで。私がいかにして利用されたのかについてで。控えめに言っても、いかにして境界線が超えられたのかについて。
だけど、有罪判決を受けた捕食者がーーああ、マジでで心臓がバクバクするーー女性を本当に本当に嫌う人が、アメリカ大統領になってしまった。
だからこの曲は女性のみんなへ捧げます。みんなこと大好きだよ。みんなを助けるよ」
と言って、権力の濫用について歌った”Your Power”を今回のツアーでは初めてパフォーマンスした。
ビリーはこれまでのツアーでも、今回のツアーでも常に同様のことを語りかけるけど、正に、この日のような時に向かって言っている言葉だと思う。私が観た今回のツアーでは「みんなのために戦うよ、みんなのこと守るよ」とまで言っていて、本当に感動した。
さらにこれに続けて演奏されたのはザ・ビートルズの”Yesterday”だ。
その次が、”TV”で、「”ロー対ウェイド”(中絶の権利)を覆した時」という歌詞が大合唱となり、ビリーはそこで感極まったのか演奏を止めてしまった。様々な感情が交差する胸が痛い場面だったはずだ。
ちなみにビリーは最後の最後まで投票を呼びかけていた。
「投票日がとうとう来た。カマラ・ハリスとティム・ウォルツに投票することは、私たちの自由と未来を守る信じらないくらい大事な方法だと思う。あなたが投票してくれなかったら何も変わらない。だからお願い、お願い、お願いだから、投票して」と。
https://x.com/billieeilishtrs/status/1853813805593051328
さらに、
「もし投票所が閉まる前に、列に並んでいたら、そのまま投票できるから!列に並んだままでいて。投票について分からないことがあったらここに連絡して。自由と未来を守るために投票して」
https://x.com/billieeilishtrs/status/1853939099742474278
ビリーは現在”HIT ME HARD AND SOFT”世界ツアーを行っているところ。私も観たけどあまりに壮大にして感動的なライブだった。現時点では、来年7月まで発表されている。
https://store.billieeilish.com/
●ジャック・ホワイト:普段から怒りを表現していたジャックが超長いコメント。アメリカ人が自分達で選んだ大統領だから、何が起きても自分達のせいだ、という内容。
「トランプは一般投票でも勝ったんだ。そういうこと。つまり、アメリカ国民が明白な独裁者を自ら選んだということだ。だから、これからアメリカは、独裁者になりたがりの奴が手に入れようとするもの全て受け取ることになる。俺達は、奴が、”プロジェクト25”を実行すると知っていた。それは、国外追放を意味し、全米での中絶禁止や、自分の2期制度の撤廃、プーチン大統領と戦争の支持、教育委員会閉鎖、気候変動の増加、LGBTQの権利の制限、司法省の統制、最低賃金維持、などなどなど….この中から何かまたは全てが実行されるだろう。
この詐欺師が、一度ならず二度もこれだけ多くのアメリカ人を騙せたというのは、全くもって驚きだ。
人種差別主義者だし、弾劾され、重罪犯として、レイプ犯として、有罪判決を受け、国家機密を盗んで自宅のバスルームに隠し、(コロナの時には)漂白剤を注射しろと言い、ハリケーンは核兵器で対処すると言い、障害者を侮辱し、退役軍人をクソ野郎と呼び、国の首都を侵略する反乱を扇動しーーありえねえだろう(!!!)、事業は全て倒産した失敗実業家であり、聖書もスニーカーもカーニバルの余興のように売る偽物キリスト教徒などなどなどだ。
キリスト教信者?奴はあなた達の仲間じゃない。間違いなくイエスの教えの一節も引用できないよ。移民?出て行けと思っている。退役軍人?彼は、徴兵忌避者だ。少数派?のことなんて全く気にしちゃいない。組合員?奴はスト破りだ。労働者階級のアメリカ人?あなた達がどれだけ苦労しているかなんて気にしちゃいない。女性?奴があなた達をどう思っているのかはすでにご存知の通りだ。レイプで妊娠して流産して担架で運ばれ死にかかってるって?それは、お気の毒様。
それなのに、サイバートラックに乗って、ローガンから、バンノン、アレックス・ジョーンズのポッドキャストを聞いているような金持ちの嫌な奴らは、中産階級には適用されない税金免除を楽しみに、銀行までの道のりで大笑いしていると言うわけだ。
今回は選挙人制度のみならず、一般投票でも上回った。つまり、奴に権力を与えたのはアメリカ市民であり、奴が施行するどんな悪事も受けるに値するということだよ。ジャック・ホワイトIII」
ちなみにまだ全て開票されていないが、現時点での一般投票の結果は、共和党7170万票、ハリス6680万票。2020年は、共和党7422万票、バイデン8128万票だった。2016年は、共和党6298万票、ヒラリー・クリントン6585万票。つまり、ヒラリーは当選しなかったけど、一般投票では民主党が勝っていたのだ。それが今回の場合は、共和党が一般投票でも勝っているので、ジャックが怒りまくっているのだ。
●カーディ・B。ハリスに感謝の言葉。
カーディ・Bが結果への怒りと、ハリス副大統領への感動的なメッセージを投稿している。
まず怒り。
アメリカ国民に向けて、「みんな大嫌い」
どんなに人があなたを傷付けようとしても、あなたの大統領選を軽視しようとしても、あなたがいかに誠実にそして威厳を持って出馬したかは、誰にも異議を唱えることはできません!あなたは始める前から全てが不利な状況であったにもかかわらず、その戦いに挑みました!しかも、絶対に負けないという態度で挑んでいたこともあなたの強さと心を象徴していたと思います。あなたは本当に全ての人たちの状況がより良くなることを望んでいました!私が言ってもあまり意味はないかもしれませんが、でも本当にあなたにこと誇りに思います!これまで私の気持ちを変えた人は1人もいませんでした。だけどあなたは変えたのです。黒人女性がアメリカ大統領に立候補するのを目撃する日が来るとはまさか思ってもいませんでした。だけどあなたは私に、私の娘達に、そして国中の人達に全ては可能なのだと見せてくれました。
そのお手本になってくれてありがとうございます。力を与えてくれてありがとうございます。真のアメリカンドリームが本来どういうものなのかを身も持って見せてくれてどうもありがとうございます!」
●タイラー・ザ・クリエイター:ハリスの写真を投稿。
●マドンナ:「これは女性達のために。
もしブルーな気分になっていても。
諦めないで、希望を持って!」
と、娘さんが、SIAの”Titanium”を歌っている映像を投稿。「私はチタン/撃たれても/倒れない」という曲だ。
●ブルース・スプリングスティーン:選挙後初のコンサートの1曲目で、「俺たちの国の戦いの祈りの曲」と言って、”Long Walk Home”をパフォーマンス。この曲はブッシュ政権の時に、彼が感じたことを歌った曲で、「男が自分の街に帰って来たのに、自分が覚えていた風景では全くなくなっていたこと。また誰も自分を気付いてくれなかったこと」を描いた曲。つまり、自分が知っていたと思っていた世界が、知っていると思っていた人達が、まるで知らない場所、知らない人に思えたことについて。
●リンダ ・リンダズ:まだ選挙権はないけど、力強いコメント発表。
リンダ ・リンダズはメンバー4人中まだ1人しか選挙権はないけど、力強いコメントを発表している。
「今日はみんなにたくさんの愛を送るよ」とし、
「あなたが破壊したものを私たちは再建する」という、彼女達の曲”Racist, Sexist Boy”の歌詞が書かれた写真を投稿。
まさにこういう時のためにある歌詞だ。
彼女達は選挙前にもTVに出演して感動的なことを言っていた。
「私達はまだ選挙できる年齢ではないけど、でも自分達の周りの世界を大事に思い、考えられる年齢ではある。
問題があまりに大きすぎて手が届かない、と思えるかもしれないけど、でも全ては繋がっているから。
アメリカが中東戦争に支援金を送ることが、そこでの暴力や破壊に繋がる。それが地球温暖化にも影響を与える。
つまりどこに住んでいても影響を受けると言うこと。
だから自分にできることは何でもしなくちゃいけない。地元で何かしたり、友達に話したり。
自分がやっていることはすごく小さなことで何の意味もないと思うかもしれないけど、すごく価値のあることだから。意味のあることだから」
ミュージシャン達の強さに感謝。