平井堅!NYでKen's Bar


なんと平井堅がNYに来ている!デビュー15周年記念スペシャルということで、Ken's BarをNYのど真ん中、タイムズ・スクエアにあるB.B.Kingで行ったのだ。以前NYでMTVのアンプラグドも観せていただいたけど、Ken's Barを観るのは初めて。思い切り楽しいショーだった。


NYで日本のアーティストがライブをする時、いつも難しいのは、ここは日本じゃないけど、観客の大半は日本人で、でもアメリカ人も混じっている時。どんなモードでライブすればいいかということ。今回のライブは、Ken's Bar15周年の特別企画だったので、特別ツアーというのが最初からあって日本からそれで来た人がいたらしい。でも、キャパは600人。しかも見事な完売。それ自体すごいと思うけど、途中、平井堅自身が、NY在住の人はいますか?と訊いたら、半分以上の人が手を挙げていた。それで、平井堅が「日本人ばかりだと思っていたら欧米の方達もいてびっくりしています」と言っていたけど、欧米の方もいて、だから完全にここは日本な感じのライブにはできない。


その空気をその場で上手く読んで、ほとんど日本語なんだけど、英語で時々話し始めて、しかもその会話に「欧米の方々」はすかさず反応を示して声援を送る。英語の部分も日本人にもわかる面白さで、日本の観客も大受け状態。そのすべてが思い切り絶妙だった。実は英語の発音も素晴らしいので、本当はきちんと英語も話せるのだと思う。


しかし出てきた瞬間から「すごく緊張しています」と大緊張していて、本当かな?と思ったんだけど、15周年なのにさっそく「10周年」と言っていたので、本当に緊張していたんだろう。しかし、そんなに緊張していて、見るからに一杯一杯な感じなんだけど、それをエンターテイメントにしているところがすごいと思った。普通自分がぎりぎりのところにいる姿みたいなのは、人には見せたくないだろうし、ましてやそれをショーにしてしまうというのは、本当のお笑い芸人でもない限り至難の技だと思うんだけど。そもそも、話しの部分でそんなに緊張しているので、観客としては、いつの間にか「がんばって!」な気持ちで見てしまっている。普通、ミュージシャンのライブに行くと、その歌声に感動して元気で頑張ろうと思った、ということはあると思うけど、「がんばって!」と思いながら見ているというのは、構図としてユニークなんじゃないだろうか?


でもそんな風に観客が、思い切り気持ちを前のめりでその姿を見つめ、そこからもちろん大事な歌に入っていくわけだけど、歌でのひたむきさと、トークと同じで歌でも自分の何かをさらけ出している感じと、それをしっかり表現にしているところと、みんなが聴き入る高音の声という、そのすべての道程が、しっかりとつながっていて、なぜか辻褄もあっているのだ。平井堅が作り上げたコミュニケーションのあり方で、ファンはそこに魅了されているのかもしれない。もちろんトークと歌で見せるショーというのは伝統的にあるスタイルだけど、でもやっぱりどこかユニークだと思う。


緊張していると繰り返していたけど、トークの部分は終始笑いの渦。NYに生まれて初めての海外旅行で来て、アダルトショップに行って、無修正のエロ本を見て感動。店の中をウロウロしていたら万引きと間違えられて、裏に連れて行かれた恥ずかしい話から、でも万引きじゃないことを証明するために、3冊買ったことや、でも違法なので持って帰れないこと、というのを英語を交えながら絶妙に話すのだ。NYの自由でだからひとりひとりが責任を持って生きているところが好きという話。だから、自分は日本人のアイデンティティを確認した、というNYにまつわる思い出など披露。


あまりに観客のテンションが高くて嬉しいと何度も言っていたけど、「嬉しすぎるので本当に皆さんのためならなんでもやりますよ。脱ぎましょうか?」と言った後に、小さい声で「あ、だから歌を一生懸命歌います」と言って、もちろん本当に渾身の熱唱をみせた。NYという街からもらったインスピレーションに感謝の意を表しているようでもあった。ノリが「忘年会」並だと言っていたけど、NYという街でも力まず日本の"芸能”的な側面を持ったショーをみせ、なのにこの場の空気にもしっくりときていて、それがエンターテイナーとしての才能だと思った。本当に思い切り楽しくて、あっと言う間に終わってしまった。


今日も2日目のライブがあるので、終わったら、セットリストなどご紹介します。NYということで、日本で行われたKen's Barではやらなかった貴重な曲をたくさんやりました。明日はライブの写真もご紹介できるかもです。お楽しみに!
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