以下、本記事の冒頭部分より。
『フォーリン・タングス』の先行シングル映像では、男女が絡み合い、若返ったザ・ローリング・ストーンズが享楽的なパーティーを繰り広げるなど、本作の肉体性と陽気さが強調されていた。ミック・ジャガーは、老いや、地球温暖化、E・マスク批判までを口説き文句に変え、洒脱なラブソングへと昇華する。全体が重くならないのは、彼らが今も生き、演奏していること自体が祝福だからだ。 本作でストーンズは、65年に及ぶ音楽史を巡る。ブルースを軸に、ブギー、グラム、パンクなどを横断するが、驚かされるのは演奏の生命力だ。ミックの声は力強く、キース・リチャーズとロン・ウッドは、今も新たなリフやグルーヴを生み出す。「”これが最後かもしれない”と思うことがあるか?」と訊かれたキースは、「”ラスト・タイム”は、俺が書いた曲だぜ!」とかわしていた。『フォーリン・タングス』は、そんなユーモアに満ちた自己賛歌だ。偉大さや神秘性を誇示せず、ブルースと初期ロックンロールの快感をもう一度差し出す。
そこには、世代を超えて我々を踊らせる力が、今も宿っている。(中村明美)
続きは8月7日(金)発売のロッキング・オン9月号にて掲載。





