日経ライブレポート「SUMMER SONIC 08」

今年のサマーソニックは大阪で観た。理由は観たいアーティストが多過ぎるから。東京だとステージ間に距離があって、観たいアーティストの、かなりを諦めなければならない。大阪は会場がコンパクトでステージ間の移動が簡単なので、たくさんのアーティストを観る事ができるのだ。変な話、僕のような職業の人間にとっては、この二日間で一年分の情報収集ができてしまう。しかし、それはファンも同じで、新しいバンドをどれだけチェック出来るかは、フェスの大きな楽しみである。

サマーソニックは、そうした洋楽ファンのニーズに一貫して応え続け、初来日したアーティストが、一年後、二年後に大きく育っていった例は多い。だから、どんな大物が来たかも重要だが、どれだけ注目の新人を集められたかも、フェスの価値を決める。

そうしたプロデューサーの目利き能力が今年のサマーソニックには十分に発揮されていた。ティンティンズ、MGMT、ケイジャン・ダンス・パーティ、サントゴールドといったアーティストは、より大きくなって来年帰って来てくれるだろう。ティンティンズは男女二人組の新人で、本国イギリスではシングル、アルバム共に一位を獲得している。ただ女性のルックスが必要以上に良くどこか作り物のイメージがあった。しかし実際の演奏は素晴らしく、特に女性ヴォーカリストの表現力は新人と思えないもので、これからの大きな可能性が感じられた。そうした新人との出会いがたくさんあった。

無論、コールドプレイ、ヴァーヴ、プロディジー、アリシア・キーズといった大物達は期待どおりの演奏を聞かせてくれた。これからフェスも成熟期を迎え、総合力が問われるようになって来た。

2008年8月9日、10日 舞洲サマーソニック大阪特設会場
(2008年8月20日 日本経済新聞夕刊掲載)
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