なぜゲスは切なく気持ちいいのか

ゲスの極み乙女。『猟奇的なキスを私にして/アソビ』
2014年08月06日発売
SINGLE
ゲスの極み乙女。 猟奇的なキスを私にして/アソビ
メジャーファーストシングルにして、ドラマ『アラサーちゃん 無修正』主題歌書き下ろし(しかも主演は壇蜜)。まさに今のゲスの極み乙女。の勢いを象徴する作品が到着である。もちろん川谷絵音の書くサビメロはポップだし、いこか嬢の4つ打ちバスドラもキテるし、ちゃんMARIのピアノは流麗だし、休日課長はローラと共演できてうらやましい。つまりこれはゲスの王道を行くダンサブル・チューンなわけだが、それにしてもこの曲は切ない。川谷の歌詞は「この気持ちはやっぱり最終的には届かないんだな」ということを歌っているように思えるし、延々と繰り返されるピアノリフとビートのループ感は、この失望と空虚がいつまでも続いていくということを執拗に伝えてくる。頭サビという構造は普通はテンションの高いイケイケのムードを生み出すのだが、ゲスの場合はいっそう切なさを掻き立てる。その満たされない感情が、最初から容赦ない「結論」として歌われてしまうからだ。踊れば踊るほど、空っぽが積もっていく。それがある種の快楽であることを、ゲスと出会って僕たちは知ってしまった。(小川智宏)
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on