終わってるわたしにできること

大森靖子&THEピンクトカレフ『トカレフ』
発売中
ALBUM
大森靖子&THEピンクトカレフ トカレフ
大森靖子の“ノスタルジックJ-pop”という曲を初めて聴いた時、人混みを歩いていると人酔いするみたいに絶望酔いした。彼女が描く絶望は自身の個人的な絶望というより、今この東京で街を彷徨う多くの女の子が抱えている絶望だった。《笑笑でもいいから帰りたくない》というフレーズには絶望が絶望に救いを求めるみたいなやるせなさを感じた。

そんな絶対的な武器を抱えて弾き語りでライヴを行ってきた彼女が2011年に結成したバンドが大森靖子&THEピンクトカレフ。今作は、この名義で初のアルバム。

個人的には打ち込みのサウンドで絶望をドスの効いたポップに仕立てている楽曲より、バンドで激情を激情のままに歌ってもらったほうが絶望酔いしないし本人も歌っててバンドならではの快感があるのではと思っていた。

今作でも“hayatochiri”や“歌謡曲”など彼らの演奏があるからこそ伝わる楽曲が並ぶ。しかし残念ながら大森靖子&THEピンクトカレフは今作の発売を前に解散した。活動全てが事件みたいな大森靖子は、もっともっと先を見ている。誰かに起こりうる死にたくなるような絶望の為に。(上野三樹)
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