だが、本作は主題歌としてだけでなく、ポップミュージックとして既に素晴らしい。なぜなら、本作には「負債」が描かれ、それが私たちの感覚としっかりコネクトするからである。《話せなかったこと》は何なのか、そのシチュエーションも、本作では一切描かれていない。だが、それはある人には後悔、ある人には喪失かもしれない何かであり、また、「負債」を抱え、それでも生きていかなくてはいけないのが私たち自身の姿なんだと、本作を聴いた瞬間にわかるのである。人を元気づけるだけではない、これもまたポップミュージックの真骨頂、そして秦 基博の真骨頂だ。(林田咲結)
“水彩の月”(Short Ver.)