ザ・ナショナルのフロントマン=マット・バーニンガーと、元メノメナであり現在はラモナ・フォールズというプロジェクトで活動しているブレント・ノップフが組んだ、エル・ヴァイのデビュー・アルバム。今夏以降に、“リターン・トゥ・ザ・ムーン”、“アイム・ザ・マン・トゥ・ビー”、“ポール・イズ・アライヴ”と3曲のリリック・ヴィデオを公開し、ザ・ナショナルの近作同様4ADから本作がリリースされる運びとなった。マットのくたびれた哀愁と皮肉を練り込んだ歌詞が立ち上り、ドリーミーなシンセワークを用いたポップ・サウンドが楽曲を彩る。老け込んでいるんだか若々しいんだか、良く分からない不思議な歌の世界を構築しているのだが、ズブズブとのめりこんでしまう。アーバンなブルース風味の“サイレント・アイヴィー・ホテル”や、ヘヴィ&ダーティーなギター・サウンドが響く“サッド・ケース”など、アレンジの妙がそれぞれに歌の力を引き出す点も実に味わい深い。暗澹とした日々に寄り添うカジュアルなサウンドトラックとしては、ザ・ナショナル以上に沁み入る魅力がある。11月以降、地元ポートランドからUS/EUツアーを開催。(小池宏和)