星野源は『YELLOW DANCER』という2015年屈指の名盤を制作して、それがオリコンウィークリーチャート1位と35万枚強のセールスを記録したことで、歌うたいであり、音楽家であり、エンターテイナーとして完全体になった。実際にツアーの2公演を目撃し、最終公演を収めた映像を観て、そんなことを確信する。ソロ活動がスタートした当初は自分の歌を聴くリスナーの姿を思い浮かべられなかった星野の歌は、ささやかな筆致で人間の感情の機微を捉え、そこに滲み出る生と性、死と私の匂いを抽出するものだった。そこから、星野の歌を求めるリスナーの数が増すごとに彼のソングライティングはどんどん開かれ、アレンジも自らの多様な音楽的ルーツを解き放つようにして色鮮やかなものになった。必然的に歌を分かち合うサポートメンバーの数も増えていった。『YELLOW DANCER』でブラックミュージックへの憧憬をこの時代に鳴るべき情緒豊かなJ-POPへと昇華し、ツアーでも贅沢な編成と演出の妙によって、星野の真摯な音楽愛とエンターテインメント精神を立体的に映し出してみせた。その記念碑的な記録映像。（三宅正一）