これが正真正銘の復帰作

ピクシーズ『ヘッド・キャリア』
2016年09月30日発売
ALBUM
せめてオリジナル・メンバーで一枚作ってからにしてよ。2年前の復帰作に対して、出来以前にそう感じてしまったファンは少なくなかったのでは。それはノスタルジーではなく、再始動後に観たライヴが素晴らしくて特別なものだったから。加えて盟友ギル・ノートンがプロデュースということもあり、もしも……という思いに余計駆られたのは事実。そしてキム・ディールの不在は、やはりとてつもなく大きかったなと。

その『インディ・シンディ』に続く再始動後の2作目。正直、23年ぶりとなった前作以上に聴く前は不安があったのだけど……結論から言えば、これが堂々たる快作。今回は新曲に十分な時間が費やされた状態で制作されたそうで、トム・ダルゲティ(キリング・ジョーク、ロイヤル・ブラッド)による質実剛健なモダン・ロックのプロデュースがサウンド全体の底上げに奏功している。そして、パズ・レンチャンティンのヴォーカリストとしての存在感。M9で聴かせるその瑞々しい歌声には、キムの不在を一瞬でも忘れさせる特別な魅力がある、と初めて素直に思えた。新生ピクシーズの門出に、今度こそ心から期待したい。(天井潤之介)