だがこれは「Chill Out, World! (頭を冷やせ、世界よ!)」の略であり、アレックス・パターソンが参加したKLFのアイコニックな名作『チル・アウト』(90年)が広めたタームへの目配せ。彼らの愛するピンク・フロイド『原子心母』(70年)のジャケへのオマージュという面ももちろんあるだろう。フィールド・レコーディングやサンプリングを随所にあしらったアンビエントに浮遊するサウンドスケープは、なるほど『チル・アウト』と地続き。とはいえパターソン/フェルマン編成が長年にわたり培ってきたクラシックからフォークに至る影響の有機的な咀嚼ぶりと音や質感の繊細なコントロールは見事で、聴くたび新たな発見に出会えるディープな宇宙のような体験が広がる。日常は加速する一方で、信じ難い事件の連続に消耗する昨今だが、この美しい作品は覚醒した状態でスロー・ダウンし、聴き手が内面と外界を繋げる=シンパシーの大事さを思い起こさせてくれる。(坂本麻里子)
音のアイソレーション・タンク
ジ・オーブ『COW / チル・アウト,ワールド!』
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ALBUM
だがこれは「Chill Out, World! (頭を冷やせ、世界よ!)」の略であり、アレックス・パターソンが参加したKLFのアイコニックな名作『チル・アウト』(90年)が広めたタームへの目配せ。彼らの愛するピンク・フロイド『原子心母』(70年)のジャケへのオマージュという面ももちろんあるだろう。フィールド・レコーディングやサンプリングを随所にあしらったアンビエントに浮遊するサウンドスケープは、なるほど『チル・アウト』と地続き。とはいえパターソン/フェルマン編成が長年にわたり培ってきたクラシックからフォークに至る影響の有機的な咀嚼ぶりと音や質感の繊細なコントロールは見事で、聴くたび新たな発見に出会えるディープな宇宙のような体験が広がる。日常は加速する一方で、信じ難い事件の連続に消耗する昨今だが、この美しい作品は覚醒した状態でスロー・ダウンし、聴き手が内面と外界を繋げる=シンパシーの大事さを思い起こさせてくれる。(坂本麻里子)