やりたい曲は全部やった

ボブ・ディラン『トリプリケート』
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ALBUM
ボブ・ディラン トリプリケート
2015年の『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』と2016年の『フォールン・エンジェルズ』で取り上げてきた、アメリカの主にロックンロール以前のスタンダード曲のカヴァー集続編。今回も基本的にはフランク・シナトラがかつて取り上げた曲がほとんどだが、あくまでもシナトラ曲なのは「ポピュラーなジャズ・スタンダード」としての指標で、これはシナトラ・プロジェクトではない。むしろ、当時の厚みのある演奏と情感をボブと彼のバンドでどう再現して伝えるかがテーマで、プレ・ロックンロール期の音を目指しつつも、ジャズ・スタンダードという土台があるため、ブルース、R&B、カントリーの演奏とも通じてくるものが音の手触りとなっている。ある意味『タイム・アウト・オブ・マインド』以降のボブの楽曲のライヴでの手触りと非常に近いものがあり、それを音として摑んでいく試みなのだ。今回3枚組となったのは前2作が大好評だったため、一気にやれるものはやってしまおうということだろう。いずれにしても、これはリメイクなどではなく、自分にはずっとこう聴こえていたという音をボブがここで提示していることが重要なのだ。(高見展)
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