まさに待望のリリース。プログレッシブでフリーキーなサウンド展開に乗る歌詞は、前作以上にシニカルさを感じさせるが、流れるようなピアノサウンドのポップネスが心地好いリード曲“シアワセ林檎”のオープニングからして胸が躍る。裏リード曲(?)“DARUMASAN”も不穏なサウンド展開を、ゲス極流のポップソングとして見事に昇華。愛すべき林檎と転んでしまった達磨というそれぞれのモチーフは、対照的なふたつの感情が実は一体であったことを描いているようでもある。さらに注目したいのはエキセントリックで急き立てるようなスポークンワーズが冒頭から浴びせかけられる“某東京”。これほどまでにアイロニカルに東京を描いた楽曲はかつてあっただろうか。《東京も6畳の部屋もそんなに変わらないと思った》だなんて、東京という街の匿名性にうんざりしながらせめて明るい未来を思い描く自分の小ささを突きつけられるようで、改めて川谷絵音(Vo・G)の言葉選びに舌を巻く。冷めた目で、でもどこか肯定的に日常を切り取る、この圧倒的な同時代性もまた彼らの魅力。活動再開が純粋に嬉しい。(杉浦美恵)