『anew』をリリースして以降、映画やドラマ、CMのタイアップのみならず、ミュージックビデオ作品が世界的にも評価されて賞を受賞するなど、音楽作品という枠を超えて芸術作品としての注目も集めてきたandropが、デビュー10周年のスタートとして『daily』を発表した。今作を聴いて、前述したような華々しい功績を重ねてきたとしても、彼らが辿り着くのは、誰にとってもいちばん身近で愛おしい「日常の日々」なのだと感じ、たまらなく安心した。《戻らない時間よ　距離よ／あなたと会えたから幸せに思えた》（“Blanco”）と過去を慈しみながら、《変わってしまったものもあるけど／今は抱きしめてあげてよ》（“Home”）と、今、自分の手の届く様々なものを大切にしていきながら日々を紡いでいく。一日たりとも飛び越えることのできないそんな人生を優しく肯定し、包み込むような温かな包容力が彼らの歌詞やメロディに宿っているからこそ、年齢問わず様々な人から愛されて10年目を迎えることとなったのだろう。耳から伝い、心の芯まで届く今作の温もりを感じながら、今年の冬を越えていこうと思う。（峯岸利恵）