カヴァデールの優れた統率力

ホワイトスネイク『スライド・イット・イン:アルティメット・スペシャル・エディション』
発売中
ALBUM
ホワイトスネイク スライド・イット・イン:アルティメット・スペシャル・エディション

ホワイトスネイクは『白蛇の紋章〜サーペンス・アルパス』(1987年)で大ブレイクした。その足がかりとなったのが、今回、35周年記念盤各種が発売された『スライド・イット・イン』(1984年)である。同作は制作経緯がややこしい。あんな混乱のなかで成功の階段を上れたこと自体が不思議だ。

もともとは、メロディとハーモニーを重視したブルージーな曲が持ち味のバンドだった。それがヘヴィ・メタル寄りのパワフルなサウンドへと移行し、アメリカでの人気を獲得したわけだ。メンバー交代が激化したその転換期に作られたのが本アルバムである。ジョン・ロード、コージー・パウエルという大物を含むメンバーで録音された。ところがUK盤のギターがメル・ギャレーとミッキー・ムーディ、ベースがコリン・ホッジキンソン、キーボードがジョンロードだったのに対し、US盤はそれぞれジョン・サイクス、ニール・マーレイ、ビル・クオモの演奏で差し替え、または追加された。だからUK盤とメタル色を強めたUS盤の質感は違うが、この措置が全米ヒットに結びついたのだ。

アルバムでは従来の白蛇王道路線を歩む“ラヴ・エイント・ノー・ストレンジャー”、レッド・ツェッペリン風のハードなブルース“スロー・アンド・イージー”をはじめ、キャッチーなフレーズが多く登場する。個々の演奏云々以前に、出来のいい曲を揃えていたのである。リーダーのデイヴィッド・カヴァデールのクオリティ・コントロールが、徹底していたのだろう。アルティメット・スペシャル・エディションには英米両ミックスに加え、デモ、新ミックス、ロード在籍時最後のライブなど関連音源が集められている。当時のカヴァデールの成功を欲する執念と統率力を感じる内容だ。 (遠藤利明)



詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ホワイトスネイク スライド・イット・イン:アルティメット・スペシャル・エディション - 『rockin'on』2019年5月号『rockin'on』2019年5月号
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