この映像ドキュメンタリーは“イマジン”の詞の一節から『アバーヴ・アス・オンリー・スカイ』と題されている。『イマジン』制作の模様を中心に、この時期のジョン・レノン&オノ・ヨーコをふり返った内容だ。ヨーコ、ジュリアン・レノン、クラウス・フォアマン、アラン・ホワイト、ジャック・ダグラスなど関係者の新インタビューも挿入され、当時の状況が語られていく。
反戦平和を歌った“イマジン”は、レノンの代表作となった。同曲の核となる《想像してごらん》のフレーズが、前衛芸術家ヨーコのコンセプチュアル・アートの発想をとりいれたものだったことが解説される。実態としては共作だったのであり、未亡人となった後のヨーコは「ジョンと出会ったのは、この歌を作るためだった」と述べる。
一方、レノンは写真撮影の現場などで見せびらかすようにヨーコといちゃついてみせた。アルバムには“オー・ヨーコ”という愛妻ソングまで収録する。さらに、あてこすりの詞で旧友ポール・マッカートニーへの怒りを歌った“ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?”を、同じくビートルズ時代の同僚であるジョージ・ハリスンとともにレコーディングするのだ。また、精神を病んだベトナム戦争帰還兵が、レノン宅にやって来るよく知られた場面も登場する。ファンである彼の思い入れや思いこみに対し、レノン本人は「ただの歌、ただの詞だ」と突き放す。
世界に向けて平和のメッセージを発信すると同時に、ごく私的な好き嫌いの感情を曲にする。自分の詞にたいした意味などないともいう。矛盾しているようにも感じられるこの多面性を抱えてレノンは生きた。矛盾こそ彼の魅力だったのであり、『イマジン』はそれがよく表れたアルバムだったと、このドキュメンタリーを観て思う。 (遠藤利明)
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