「ヒーローには誰にでもなれる。簡単なことでいいんだ。傷ついた少年の肩に上着を掛けて、世界の終わりじゃないと教えて安心させるような」――今作を聴いて思い出したのは、映画『ダークナイト ライジング』のこの名台詞だった。困難に直面した時こそ、何よりも大切なのは、誰かを助けたいと思って立ち上がること。決して簡単なことではないけれど、NAMBA69は、そうやってヒーローであり続けることに自覚的なバンドだ。

アッパーなファストチューン“LIFE IS GOOD”でいきなり人生を肯定してみせ、“YOU'RE MY FRIEND”で《僕はキミのためにいるし／キミは僕のためにいてくれる（訳）》と歌い、さらに“BEST OF THE BEST”というタイトルどおり《お前はベスト中のベスト（訳）》と宣言する。それがキラキラしたメロディと疾走するビートに乗って飛んでくるのだ。現状に不安や怒りも抱えているだろうに、これだけのポジティビティを持って大丈夫だと笑ってくれる強さに救われる。ラストを、彼らにとってのヒーローであり親友＝パンクロックへの想いで締めくくるのも熱い。（後藤寛子）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年9月号より