ボーカロイドクリエイターとしてキャリアをスタートさせたwowakaが、バンドを組むにあたりシノダ、イガラシ、ゆーまおの3人をメンバーとして招いた理由――それはこの作品を聴けば充分すぎるくらいに体感できるだろう。3人の気高い個性と美学、4人で過ごした濃厚なバンド人生、敬愛するメンバーを失った混乱が、1曲1曲で誠実に脈打っている。

シノダがギターボーカルを務める3人編成での初のフルアルバム。シノダが全作詞と6曲作曲、イガラシとゆーまおがそれぞれ2曲作曲を担当している。ポップセンスを宿しつつも崩れそうな危うさが痛烈な“ハイゲイン”、穏やかでありながら激しくしなやかに展開する“dirty”、センチメンタルなメロディと精巧なアンサンブルに気品が溢れる“faceless enemy”、憂いと遊び心が交錯した“bouquet”や“Marshall A”、ゆるやかに沈んでいく内省的な“うつつ”など、次々吐露される嘘偽りない想いたちが切実に訴えかけてくる。その中で象徴的なのは“イメージ”と“YUBIKIRI”。天を突き抜けどこまでも高く舞うようなラストに、ヒトリエの羽化を見た。（沖さやこ）

『ROCKIN'ON JAPAN』4月号より