ラティーノの誇りをここに

セレーナ・ゴメス『リヴェラシオン』
発売中
EP

歌手、女優、プロデューサーとして、名実ともにアメリカのエンターテインメントを牽引してきたセレーナ・ゴメス。そんな彼女にとって、ラテン音楽はいつか還るべきルーツだった。

メキシコ人の父とイタリア系アメリカ人の母の元に生まれ、テハーノ・ミュージック(テキサスに住むヒスパニック系移民による伝統音楽)の女王セレーナ・キンタニーヤにちなんで、その名が付けられたセレーナ。
5歳で両親が離婚するまではごく普通にスペイン語でも会話していたという彼女は、今回のEP制作にむけて語彙やアクセントを改めて習得したという。実際にセレーナは全編スペイン語の音楽制作を10年ほど前から構想していたらしく、その念願が今回の7曲入りEPでようやく結実したのだ。

今作には2018年の大ヒット曲“タキ・タキ”でもセレーナと共演していたDJスネイク、オズナやバッド・バニーといったプエルトリコ出身のトップ・スターたちも手がけたタイニーなど、昨今のラテン音楽シーンを代表するプロデューサーたちが集結。まさにラテン・アメリカ/カリビアン・ミュージックの「今」を濃縮した1枚となっている。

エレクトロ・ポップやR&Bを通過したハイブリッドなダンスホール/レゲトン・サウンドを背景に、これまでの歩みとメキシカン・アメリカンの3世として生まれたことを誇らしげに歌い上げていくセレーナ。そこにはトランプ前政権が加速させた移民排除に対する怒りや、深刻な人種差別に揺れる昨今のアメリカにむけたメッセージも読み取れる。
ルーツと伝統を敬い、自分を愛することの大切さを訴えるのと同時に、現在のラテンがポップ・ミュージックの最先端であることも提示した、会心の1枚。(渡辺裕也)



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『rockin'on』2021年5月号