「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」とはニーチェの言葉だが、6月9日・ロックの日に届けられるニューシングルの表題曲（映画『ゴジラvsコング』日本版主題歌）はまさにその言葉を音楽で表現する楽曲になった。昨年の“All You Need”以来となる中野雅之（BOOM BOOM SATELLITES）との共同プロデュースで、ディレイがかったジャン・ケン・ジョニー（G・Vo・Raps）の歌い出しがエレクトロビートのカタパルトに乗って射出される。美しくも混沌としたサウンドのレイヤーを掻い潜って突き進むさまは興奮必至、クライマックスに向けてロックな高揚感の手応えを増してゆく展開も秀逸だ。現在の我々を鼓舞するように、不安や恐怖に苛まれながらもそこに果敢に挑むMWAMがいる。

カップリングには、こちらも映画タイアップとなった配信シングル“Perfect Clarity”も収められているが、特筆すべきは3曲目の新曲“小さきものたち”だ。軽やかで心温まるブレイクビーツミクスチャーの曲調に、トーキョー・タナカ（Vo）の優しい歌声が伝う。大きな話題性をもたらすはずの名曲である。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』7月号より