目まぐるしく聴き手を翻弄していく、セオリーに縛られない自由な音づかいと楽曲展開はさらにエネルギッシュに。語感を巧みに操り、歌詞に綴られた重苦しい叫びを小気味よく彩っていく。そのセンスは曲順などにも反映されており、クラシックピアノをモチーフにしたインスト、緻密に練られた曲間、2部構成的に畳み掛けるラスト2曲など、スリリングなストーリーテリングが潔く爽快。特定の1曲にスポットが当たりやすい現代で、「アルバム」の意義を提示する姿勢もカウンター的だ。根を張った深い闇を隅々まで吸い込んで、それを勢いよく天へと放つような豪快な勇敢さ――それは雨を吹き飛ばしてしまうほどの突風のようだ。感傷性の高い前作から、攻めの姿勢が矢面に立った今作。ユニットの可能性がさらに拡張した。（沖さやこ）
