生き抜く意思を歌え

星野源『Cube』
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1997年のヴィンチェンゾ・ナタリ監督によるカナダ産傑作サスペンスをリメイクした映画『CUBE 一度入ったら、最後』の主題歌。《昔観た カナダの映画であった/いかれた箱で殺されてゆくだけ》というくだりには知っている人をニヤリとさせるウィットが潜んでいるし、箱に閉じ込められた極限状態を《わーきゃーと叫べど/待つだけじゃ 助けは来ないさ》と突き放すようなフレーズも、“創造”にも連なる不規則なビートも、混乱と混沌そのもののようにリスナーを暗黒の渦に呑み込んでいくような不穏さだ。だが、それだけではない。この曲のキモは後半に向けてバーンと風景が広がるように明るく展開していくサウンド(オルガンの音色が効いている)と、何より《光に包まれて 出るとどうだ/箱がただ 球になっただけだ》という歌詞だ。つまり、箱の外に出たところで我々はやはり囚われの身である、と言っているのである。だがそれをペシミスティックに告げるのではなく、だからこそ《一生の切なさを 笑いながら/踊らせろ》という意思に転換してみせる。最高に星野源的な「希望の歌」だと思う。(小川智宏)