疲弊し傷ついた時代ごと他者を優しく包み、鼓舞するような温かみあふれる作品だ。ただ、何より本作が胸を打つのは、人が集まり演奏を重ねるということに対する彼ら自身の至上の喜びが伝わってくるから。それは、起伏に富んだメロディが喜怒哀楽を様々に刺激する“Peach Melba”と、ケルトフォーク~カントリー調のソロ回しが楽しい“Apple Pie Rag”の2曲のインストも、3曲の歌モノも同様だ。今は会うことの叶わない「君」との再会を想う“Sunny Day”は過不足なく込められたエモーションが実に心地好いし、勢いを抑え進む演奏の上で伸びやかに広がるボーカルが美しい“Life”もこのEPを締めくくるのにぴったりの出来。そして、どこをどう切っても美味しいという、とんでもない強度のメロディを誇る“世界は変わる”は既に名曲の風格さえ纏っている。この曲で彼らは、《あなたに逢えて 世界は変わる/いつまでも側に連れてって/今日からまた歩き出そう》と、このさりげなくも鋼のように力強い楽曲たちがこれから果たしていく役割をまるごと言い当ててみせるのだ。(長瀬昇)
『ROCKIN'ON JAPAN』3月号より