のんが脚本・監督・主演を務めた映画『Ribbon』は、コロナ禍で表現の場を奪われた人々の姿を描いている。この作品に共鳴して書き下ろされた主題歌“ボクだけのもの”が伝えてくれるのは、行き場をなくして消えそうになっている生命の炎を懸命に守り、再び激しく燃え盛らせようとしている音と言葉だ。繰り返される《心は僕だけのもの》に含まれている意味は、とても重くて深い。どんなに理不尽な現実が襲いかかろうとも心は自分自身だけのものであり、他者によってどんなに強制されようが、抱く想いが真の意味で奪い去られることはない。そんな事実に気づかせてくれるこの曲は、終盤に差しかかったところで大合唱を誘う清々しい高鳴り方をするところもたまらなくいい。音を発したくなる自分の再確認は、生きることを諦めていない自分の再確認でもある。「この曲に耳を傾けているあなたは生きている」ということを何度でも教えてくれるからサンボマスターが大好き――そんなふうに思う人は少なからずいるのでは? 悶々とする現実が続いているが、彼らがこういう曲を届けてくれるのは大きな救いだ。(田中大)
「生きている」ということ
サンボマスター『ボクだけのもの』
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